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    どのようなタンパク質が優れているか、好まれるかというのは、摂取する目的によって異なってくると思われます。
    たんぱく質の消化性が優れている、つまり加水分解されやすいと、アミノ酸として吸収されやすくなりますので、たんぱく質効率を期待する場合(タンパク質摂取が不足している場合など)には、アミノ酸スコアが高く、消化性も高く、タンパク含有量の高い食品が求められると考えられます。

    fishpro
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     確かにかまぼこなどの練り製品は肉類など他の食品よりもタンパク質の消化スピードが速く、脂質含有量も少ないため、腹持ちが悪くなる印象を受ける人もいると思います。一般的に消化のスピードは糖、タンパク質、脂質の順で速いとされており、脂質が多い畜肉よりは魚肉タンパク質が主体の食品の方が素早く栄養成分が分解され、胃や腸などの消化器官に残存しなくなると考えられます。そういう物質的な意味では、かまぼこの「腹持ち」は悪いと考えられます。練り製品の中でも揚げや蒸し、ゆでなどの加熱方法の違いや、調味料の違い、弾力の強さの違いでも消化されやすさは変わります。「腹持ち」が悪いイコール消化器官への負担が少なく、効率的に栄養が使われる、とポジティブにとらえて、他の「腹持ち」の良い食品とうまく組み合わせて食事を楽しむことが一つの考え方だと思います。

     しかし、実際に人間が感じる「満腹感」や食欲は中枢神経への刺激により複雑にコントロールされていますので少し解説します。よく知られているのが食欲刺激ホルモンと言われるグレリンや、満腹刺激ホルモンと言われるレプチンやペプチドYY(PYY)という物質で、体内でのグレリンの分泌量が多いほど空腹と感じ、逆にレプチンなどの分泌量が多いほど満腹と感じるため、これらホルモンのバランスによって「満腹感」が左右されます(参考資料1)。これらのホルモン分泌は食事中の栄養成分との関わりも深く、例えば、朝食を高タンパク質食にすると食欲刺激ホルモンの分泌が減り、満腹刺激ホルモンの分泌が増えて「満腹感」が継続しやすく、間食が減るという研究結果があります(参考資料2,3)。タンパク質の摂取が食欲を抑える、というエビデンスも増えてきており(参考資料4,5)、まだ魚肉タンパク質に関する研究は少ないですが、ダイエットの観点から考えてみることも面白いのではないでしょうか。ちなみに、睡眠不足が続くとグレリンの分泌が増え、レプチンの分泌が減り、体重増加につながることも分かっています(参考資料6)。しっかりとタンパク質を摂取して、規則正しい生活をおくることが健康維持には大切だと言えるのではないでしょうか。

     〈参考資料〉
     1)高橋医院HP.食事と健康
       
     2) タンパク質を多く含む(1日35グラム)朝食を食べることで一日を通して食欲を抑え間食を減らすことが出来る.
      
     3) Heather L. et al. Beneficial effects of a higher-protein breakfast on the appetitive, hormonal, and neural signals controlling energy intake regulation in overweight/obese, “breakfast-skipping,” late-adolescent girls. The American Journal of Clinical Nutrition, 97. 4 (2013): 677–688.
     
     4)リハビリmemo.ダイエットで食欲を抑えたいならタンパク質を摂取しよう!.
       
     5)Kohanmoo, A. et al. Effect of short- and long-term protein consumption on appetite and appetite-regulating gastrointestinal hormones, a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Physiology & Behavior, 226 (2020): 113123.

     6)re:sumica HP. 太りやすい人は要注意! 睡眠不足が食欲を刺激する.

       

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    返信先: かまぼこのすり身の原料について #1777
    fishpro
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     赤身魚は弾力が必要とされる板かまぼこの原料にはあまり向いていませんが、うま味が強く、風味も良いため、揚げかまぼこなどの原料に向いています。
     かまぼこの弾力は筋肉タンパク質であるミオシンがトランスグルタミナーゼという酵素により重合し、網目構造が形成されることで生まれます。赤身魚にはこのトランスグルタミナーゼの働きを弱くするアンセリンやカルノシンといったいわゆるイミダゾールペプチドが豊富に含まれているため、うまく弾力を作り出すことが出来ないのです(参考資料1)。これらのジペプチドは渡り鳥や長距離遊泳する回遊魚などに多く含まれ、抗疲労効果を示す有用な物質で健康食品にもよく使われていますが、板かまぼこにとっては避けたいものです。マグロやカツオなどの回遊魚は泳ぎ続けるためのスタミナが必要であるため、酸素を蓄えるミオグロビンが多く魚肉が赤く見え、エネルギー源となるグリコーゲンも大量に含んでいます。このグリコーゲンが分解されると酸性物質が増えてpHが低下し、タンパク質が変性してしまうため、これも弾力が出にくい要因となります。新鮮な赤身魚を使ってpHをコントロールしながら作ればしっかりした弾力を出すこともできますが、コストや技術的に難しいところもあるため、赤身魚、白身魚のそれぞれの特徴を生かした使い分けが良いと考えられます。

    〈参考資料〉
      1)Wan J. et al. Inhibitory factors of transglutaminase in salted salmon meat paste. Fisheries science 61.6 (1995): 968-972.

    返信先: 赤身魚と白身魚の違い #1755
    fishpro
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     赤身魚と白身魚の違いは赤い色素タンパク質であるミオグロビンやヘモグロビン含量の差です(参考資料1,2)。これらの色素タンパク質が100 g中に10 mg以上含まれていれば赤身魚と定義されています。ミオグロビン含量が多く、魚肉が赤く見えるものを赤身魚、逆にミオグロビンが少なく、魚肉が白く見えるものを白身魚と呼んでおり、ミオグロビン含有量の違いはこのタンパク質の機能に由来しています。ミオグロビンは血液中のヘモグロビンが運んできた酸素を受け取って筋肉中で蓄える役割を担っており、酸素が大量に必要な魚種ほど含有量が高く、代表的な赤身魚としては長時間遊泳する回遊魚であるマグロやカツオ、サバなどが挙げられます。
     また、赤身魚の筋肉は人間でいうところの遅筋に相当し、いわゆるマラソンランナータイプの筋肉として知られています。ヒラメやタイなど普段はゆったりと動いているが、エサを捕獲する時や危険を回避する時にはパッと瞬発的に動く魚が白身魚には多く、有酸素運動よりも無酸素運動を得意としています。白身魚の魚肉は人間だと速筋に相当する筋肉で短距離ランナータイプと言えます。
     これらの筋肉の種類の違いは食感や味、栄養性の違いにも反映されますので、それぞれの特徴を知っておくとより美味しく魚を食べられると思います。

    〈参考資料〉
      1)魚食普及推進センター.赤身魚と白身魚の違い そして・・・青魚と赤魚とは??.

      2) 魚肉たんぱく研究所HP.魚肉たんぱく基礎講座 魚肉たんぱく.
       

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    返信先: 魚の生息域の変化について #1754
    fishpro
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     基本的には海水魚は水温の変化に応じてその生息域を変化させます。池や川などの閉鎖系に生息する魚は季節とともに大きく変化する水温に適応するため、運動に関わるタンパク質ミオシンの性質が変化する(温度馴化)ことが知られています(参考資料1)。それに対して海水魚は海水温に合わせて筋肉タンパク質を変化させることができないため、生息可能な環境を求めて移動していくと考えられています。よく「昔獲れていた魚が最近はめっきり獲れなくなった」という話を耳にすると思いますが、別の場所では「昔いなかった魚が最近獲れるようになった」という現象が起きているのではないでしょうか。
     単純に考えると日本周辺では、地球温暖化による海水温上昇に伴い、南にいた魚が北へ移動すると予想されますが、実際には南へ移動した魚がいることも環境DNAを用いた研究から明らかにされています(参考資料2)。これは新たな魚の出現により居場所を失った魚が移動したためではないかと考察されています。
     海水温以外にも藻場の減少や餌の状況、天敵の存在など複雑な要因が絡み合ってはいるため一概には言えませんが、以前と比べて多くの魚の生息域が変化してきたことは確かであり、今後も続くと予想されます。地域の名産とされていた魚がいなくなり、価格が高騰するという現象も多くみられるのではないでしょうか。魚に関わる仕事をしていく上では、より先読みが重要な時代になってきたと考えられます。

    〈参考資料〉
      1)渡部終五. 魚類筋運動の温度馴化. 比較生理生化学 9.1 (1992): 12-21.
        
      2) NHK.あの魚が食べられなくなるかも 温暖化で日本の海が激変!?.
       

    返信先: 魚の調理方法と栄養について #1753
    fishpro
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     それぞれの特徴についてまとめてみます。刺身は調理いらずで簡単に食べることができ、DHAなどの高度不飽和脂肪酸もしっかり摂取出来ます。実は高度不飽和脂肪酸は非常に不安定であるため、過度な加熱調理により他の物質に変化してしまいその効力を発揮できなくなります。脂肪酸の健康機能性重視なら刺身がおすすめです。
     焼き魚は水分が飛ぶため、うま味が濃縮されます。食中毒のリスクがないことも利点ではないでしょうか。あまり焼きすぎると有用な脂肪酸やビタミンが減少するため、適度な調理を心がけましょう。
     煮魚の利点は肉が柔らかくなり食べやすくなることでしょうか。コラーゲン成分が煮汁に溶け出したり、ビタミンCが破壊されたりという特徴も知っておくと良いかもしれません。
     照りは香ばしい美味しさを付加できることが一番の利点です。みりんに含まれる糖と魚肉のアミノ酸がメイラード反応を起こすことで香ばしさが生じます。

    返信先: 肉と魚のたんぱく質の違い #1752
    fishpro
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     畜肉よりも魚肉の方が高タンパク質低脂質であるという傾向があります(参考資料1)。もちろんすべてではありませんが、水分以外の組成のうち牛肉では3/4、豚肉、鶏肉では1/2程度が脂質であるのに対し、スケトウダラやヒラメではタンパク質が3/4以上を占めます。また、魚肉は消化されやすさにも大きな特徴を持っています。もともと魚肉タンパク質は乳や大豆タンパク質よりも消化されやすく(参考資料1)、魚肉から作られた水産練り製品は畜肉や白身のゆでたまごと比べて人工胃液に消化されやすいということも分かってきています(参考資料2,3)。これが胃腸に負担をかけにくい食品として注目されている理由です。

     当サイトのコラムでも解説しておりますのでこちらも併せてご確認ください。

    〈参考資料〉
      1)魚肉たんぱく研究所HP.魚肉たんぱく基礎講座 魚肉たんぱく.
       
      2) 植木暢彦.魚肉タンパク質と魚肉ペプチドでスポーツに適した体に.アクアネット 25, (2022): 27-32.
     
      3)一般社団法人 日本かまぼこ協会HP.動画と図でわかるフィッシュプロテイン.
       

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    返信先: 美味しい魚の見分け方 #1751
    fishpro
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     美味しさの定義ごとに見るところが違うかもしれませんが、いくつか事例を紹介したいと思います。鮮度が良いものを良しとする場合には、外観の見極めが大切です。鮮度が落ちてくると目の色が濁ったり、血走ったりしますし、エラの色がくすんできます。肉質も柔らかくなってくるため、そうなっていない魚を選びましょう。
     コリコリとした食感を重視する場合には漁獲直後の魚を入手することが大切です。漁獲直後の肉質は柔らかいですが、その後死後硬直によりコリコリとした食感が生まれます。
     うま味重視の場合は二つの視点から。核酸系のうま味成分であるイノシン酸はエネルギー物質(ATP)の分解が進むほど増えてくるので一定期間の熟成が必要です。同じようにアミノ酸系のうま味成分であるグルタミン酸もタンパク質の分解で生じるため、漁獲直後よりも時間経過後の方が美味しさを強く感じます。ただし、「タラの沖汁」と言われるように船上ですぐに食べないとどんどん分解が進んでしまうような魚がいる一方で、「腐ってもタイ」と言われるように分解がなかなか進んでいかない魚もいるので、魚種ごとに適した見極めも大切です。もう一つのうま味成分は脂質ですが、これは季節や産卵の影響で変動します。餌が豊富な時期に脂質を蓄えたり、産卵期間近には大量のエネルギーが必要とされるため脂質が使われてほとんど残っていなかったりと様々です。こちらも魚種ごとの旬を知ることが美味しい魚を食べるための秘訣とも言えます。

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    返信先: かまぼこのすり身の原料について #1750
    fishpro
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     一般的に、脂質が少ないことと弾力が出やすい魚であることがかまぼこの原料に適しているとされており、シログチやスケトウダラなどの白身魚が代表的なものです。また、価格が安いことも重視されます。そのまま食べても美味しい魚は市場価値があるため、コストをかけてすり身にしてかまぼこを作ってもなかなか太刀打ちできません。弾力に関しては、世界に30,000種以上も存在する魚のすべてが弾力を出せるわけではなく、それぞれの魚種で弾力の出やすい温度帯も異なるため、原料と真摯に向き合って特徴を見極めることが魚の命を生かすことのコツだと言えます。

    返信先: 魚を食べないとどうなりますか? #1749
    fishpro
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     一般的には、疾病のリスクが高まると考えられています。例えば、魚を週に1~2回食べる人と比べて、ほとんど食べない人の大動脈疾患で死亡するリスクは2倍に高まることが報告されており(参考資料1,2)、他にも魚の摂取量や頻度が多いほど、心臓病の発症リスクや死亡リスクが減少することも知られています(参考資料3,4)。魚にはEPA(IPA)やDHA、アスタキサンチンなど健康機能性成分が含まれていることに加えて、魚肉の主要成分であるタンパク質やその分解産物であるペプチドも様々な健康機能性を持つことが次々と明らかにされてきてきました(参考資料5)。魚を食べないとすぐに不調をきたす、というわけではないかもしれませんが、長期的にみると魚由来の健康機能に関する恩恵を受けられないことは少し損をしているのではないかと考えられます。

     〈参考資料〉
      1)TSUKUBA JOURNAL.魚をほとんど食べない人で大動脈疾患死亡が約2倍に増加.

     2) Yamagishi K. et al. Fish intake and risk of mortality due to aortic dissection and aneurysm: A pooled analysis of the Japan cohort consortium. Clinical Nutrition 38.4 (2019): 1678-1683.
      
     3) Iso H. et al. Intake of fish and n3 fatty acids and risk of coronary heart disease among Japanese: the Japan Public Health Center-Based (JPHC) Study Cohort I. Circulation 113.2 (2006): 195-202.
     
     4)Nakamura Y. et al. Association between fish consumption and all-cause and cause-specific mortality in Japan: NIPPON DATA80, 1980–99. The American journal of medicine 118.3 (2005): 239-245.
       
     5)Hosomi R. et al. Seafood consumption and components for health. Global journal of health science 4.3 (2012): 72.

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    返信先: 魚卵について #1748
    fishpro
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     「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」によると「1日400 mgを目安にしたプリン体の摂取制限」が示されており、100 g中のプリン体の含有量はスジコ(イクラ)で15.7、カズノコで21.9 mgと極めて少ない部類に属し、タラコで120.7、明太子で159.3 mgという値です(参考資料1)。豚レバー(284.8 mg/100 g)やカツオ(211.4 mg/100 g)、イサキ白子(305.5 mg/100 g)など比較的含有量の高いものもありますが、100 g換算よりも実際に食べる量で考えることも大切です。魚類にもそれなりの量が含まれています(イサキ:149.3、マダイ:128.9、サワラ:139.3 mg/100 g)が、魚肉を大量の水で洗う水晒し工程がある水産練り製品ではプリン体の含有量が少なくなる(板かまぼこ:26.4、笹かまぼこ:47.8、焼きちくわ:47.7 mg/100 g)ことも分かっています。尿酸値が気になる方は練り製品という選択肢はいかがでしょうか。
     コレステロールに関しては、鶏卵(370 mg/100 g)や牛肉肩ロース(88 mg/100 g)と比べるとイクラで480 mg/100 g、たらこで350 mg/100 g(参考資料2)と少し多いように感じます。しかし、これらの値も100 g換算であるため、実際に食べる量を想像して判断することが大切です。卵を2個(約120 g)食べるよりも100 gの瓶詰めのイクラをすべて食べることの方が大変という考え方もあるのではないでしょうか。魚卵にはEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸も豊富に含まれているため、適度に食べることは体にとっても良いことだと考えられます。

    〈参考資料〉
      1)公益財団法人 痛風・尿酸財団HP.食品・飲料中のプリン体含有量.

      2)日本食品標準成分表2020年版(八訂)

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    返信先: たんぱく質の摂取について #1747
    fishpro
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     たんぱく質の摂取推奨量は18-64歳の男性で65 g、女性で50 g/日とされており、耐容上限量は現時点では設定されていません(参考資料1)。たんぱく質の過剰摂取は、その代謝に関わる腎臓への影響が懸念されており、多くの研究報告がありますが、確固たる悪影響の根拠はいまだありません。少なくとも35%エネルギー未満であれば腎機能を低下させることはないと結論付けられています(参考資料2)。
     とはいえ、極端な大量摂取は腎臓へも負担をかけますし、単純に摂取カロリーも増加してしまうため、あまり好ましいことではないと考えられます。常識の範囲内で様々な食品からバランス良くたんぱく質を摂取することが望まれます。

      〈参考資料〉
      1)厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2020 年版).
       
      2)Van E. et al. A systematic review of renal health in healthy individuals associated with protein intake above the US recommended daily allowance in randomized controlled trials and observational studies. Advances in Nutrition 9.4 (2018): 404-418.
       

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    返信先: かまぼこの塩分について #1746
    fishpro
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    一般的に、血中の塩分濃度が高まるとそれを薄めるために水分の吸収も促進されて血液量が増え、結果として血圧が上がることから塩分と高血圧の関係がイメージされていると考えられます。
    実際には、食塩の摂取で血圧が上昇し、減塩により血圧が低下する「食塩感受性高血圧」と食塩摂取の影響を受けない「食塩非感受性高血圧」の二つのタイプに分けられ、後者が約50%と言われています(参考資料1,2)。
    かまぼこ100g中の食塩相当量は2.5gと、他の食材(プロセスチーズ:2.8g、コーンフレーク:2.1g、カップラーメン:7.1g、フランスパン:1.6g)(参考資料3)と比較して圧倒的に多いというわけではありませんが、味の感じ方からなのか塩分が多いというイメージが先行しているようです。
    もちろん過剰な食塩摂取は体に良くありませんが、塩分だけに着目してタンパク質の恩恵を無視してしまうことは少しもったいないのではないでしょうか。
    例えば、動物性タンパク質の摂取により高血圧のリスクが減少する(参考資料4)ことや1日の動物性タンパク質摂取量を20g増やすと脳卒中のリスクが26%も低減する(参考資料5)、ことが研究結果として明らかにされています。かまぼこのタンパク質を使った実験でも、通常タンパク質源として用いられている乳タンパク質(カゼイン)をかまぼこタンパク質変えると血圧上昇が抑えられる、という研究結果が得られています(参考資料6)。
    また、食塩は栄養素の吸収に重要な役割を果たしています。糖や大部分のアミノ酸は輸送体(トランスポーター)を通してナトリウムと一緒に小腸から体内へ吸収されますが、その時に塩分摂取量が不足し、ナトリウムが足らなければ栄養素がスムーズに体内へ吸収されません。実際に関西大学の福永先生が実施した実験では、低塩状態よりも適塩状態の方が、体重が増加して成長が促進されるというデータが得られています。疾病レベルの高血圧の方は医師のアドバイスに従うことが必要だと思いますが、一般健常者であれば過剰な塩分摂取や減塩によるリスクを避けつつ、良質なタンパク質と塩分をバランスよく摂取することが健康維持には大切だと考えられます。

    〈参考資料〉
    1)オムロンHP,「食塩感受性高血圧」って、どんな高血圧?

    2)野村病院予防医学センター,健康だより

    3)食品成分データベース

    4)Buendia JR et al., Am. J. Hypertens., 28, 372 (2015)

    5)Z. Zhang et al., Neurology, 83, 19 (2014)

    6)村上哲男,水産練製品の機能性研究成果集,p110,全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会 (2010)

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