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設立の趣旨

1.日本人の栄養の偏りが大きな問題に

この20、30年の間に日本人の動物性たんぱくの摂取源が急激に変化している。魚介類が減少し、畜肉類が増加して、2007年頃に、日本人一人当たりの摂取量が逆転をしたまま歯止めが利かない。

1995年を100として、世代別のたんぱく質の摂取量の推移は、高齢者は一時減少していたが、かつての摂取量に回復している。それに対し、ほとんどの若年層、壮年層、特に40歳代、50歳代においては、1995年の80%を切っている異常な減少状態にあり、将来の健康劣化が危惧される。

グラフより:タンパク質摂取量が低下、脂質摂取量は一旦減少し、再度上昇

この傾向が続くと、高齢者は、脂質の取り過ぎによる疾患を抱えることになるであろう。若年層壮年層は、たんぱく質の摂取量が絶対的に不足する不健全な食生活をあらためない限り体格体力も免疫力にも問題が顕在化してくるであろう。
日本人の健康を脅かす上述の現状に対して、その改善手段は、高たんぱく低脂質の魚介類から動物性たんぱく質を十分に摂っている姿に回復させることだと考えられる。

資料:厚生労働省「国民栄養調査」(平成7~14年)、「国民健康・栄養調査報告」(平成15~30年, 令和元年)のデータを用いてグラフを作成

2.魚たんぱくの素晴らしさが知られていない

魚介類の栄養特性については、水産業界の長年の広報活動によってEPA,DHAについては多くの生活者はよく理解しているが、魚の筋肉である肝心の魚肉のたんぱく質の素晴らしさを理解して積極的に食する人はとても少ない。
魚肉タンパク質は20種類のアミノ酸で構成された完璧なバランスの動物性たんぱく質であり、畜肉と比べるとはるかに消化吸収も良い。更には分解吸収される段階のペプチドには、様々な栄養機能性があることも解明されつつある。魚肉たんぱくの数々の素晴らしさを科学的に紐解き、それを社会の常識にしていくことができれば、魚食の普及は大いに進むと期待される。

3.高齢化社会における魚食の意味

わが国は2025 年には75 歳以上の後期高齢者が2,000 万人を超える世界一の超高齢社会となる。 後期高齢者におけるフレイル(注1)やサルコペニア(注2)、寝たきり状態を防ぐために良質なたんぱく質を摂ることが肝要。
一方、慢性腎臓病(CKD)患者の食事指導では低たんぱく食が推奨され、高齢者フレイルのエネルギー補充には医師や管理栄養士の指導も欠かせないという現実もあり、たんぱく摂取の問題など医療面を含めた幅広い視点から、魚肉のたんぱく質の有用性を明らかにする最先端の研究成果を取り入れた取り組みが不可欠である。
(注1)フレイル:加齢により心身が老い衰えた状態
(注2)サルコペニア:加齢による筋肉量の減少および筋力の低下

4.すべての生活シーンの中で機能性を

乳幼児、青少年の健全な成長にとって、壮年の健康にとって、スポーツアスリートの体づくりにとって・・・
すべての生活の中で、たんぱく質を基礎栄養素としての観点だけで語るのではなく、消化吸収過程でのペプチド、アミノ酸が持つ様々な機能性を明らかにし、特に魚肉ならではの特性を探究することが重要と考える。
これまでの研究によって、魚肉のたんぱく質には、抗酸化性をはじめ、ガンの抑制、血糖値上昇抑制、アルツハイマー予防、血圧上昇抑制など様々な機能性が確認されているが、そのメカニズムまで解明が至っていない。
また、特定のペプチドにある種の機能性が見出されている研究も数が少なく、ペプチドやその他の栄養素との相乗効果、相関関係まで明らかにされた知見は少なく、その探究が求められている。

5.食糧の環境負荷を考える

世界では人口増加による環境への負荷が種々の側面から現れている。最も危惧されているのが人間活動に伴って発生する温室効果ガスの増大に伴う地球規模の温暖化である。食料の需給も緊迫した課題で、世界人口は2050年には約100億人に達すると予想されている。また、途上国の経済発展に伴うたんぱく質の需要も増大することが考えられる。
栄養価が高い動物性たんぱく質は畜産物、水産物で供給されるが、畜肉では、CO2の排出や多くの穀物の必要性が問題視されている。一方、水産資源については、漁獲に要するエネルギーも考慮する必要があるが、天然の魚介類資源を乱獲することなく持続的に利用することと環境負荷の少ない養殖が人類の未来にとって不可欠なことは明らかである。
健康機能性に優れた魚介類たんぱく質を環境保全に配慮しながら余すことなく利用することがますます重要な課題となる。

事務局・問い合わせ先

お魚たんぱく健康研究会  事務局長 鈴木博晶
〒250-0032
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ご入会について

世の中にお魚たんぱくの素晴らしさの理解を広げ、健やかな社会を実現するための情報プラットフォームです。魚肉普及と水産加工の発展に積極的に関わる意志ある法人・団体と個人、様々な方の入会をお待ちしております。是非ともこの研究会にご参加ください。