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〈消化吸収の基礎〉膵液中の消化酵素

2024.07.16

ここではタンパク質の消化に大切な膵液中のタンパク質分解酵素について解説する。

膵液中の消化酵素

膵臓から分泌される膵液中には、糖質を分解するアミラーゼ、脂質を分解するリパーゼ、タンパク質を分解するプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が含まれており、食物の消化に重要な役割を果たしている。ここではタンパク質分解酵素を中心に解説する。胃で消化された食物が小腸(十二指腸)に到達すると、その刺激によって膵液が分泌され、消化が促進される。

3つのタンパク質分解酵素

膵液に含まれる代表的なタンパク質分解酵素はトリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼである。いずれも胃液中のペプシン1)と同様に分解活性をもたない前駆体として分泌され、膵臓自身にはダメージを与えない仕組みを持つ(図1)。トリプシンはトリプシノーゲンとして分泌され小腸到達後に腸粘膜のエンテロペプチダーゼ(エンテロキナーゼ)によりN末端が切断され活性型へと変化する。さらに活性化されたトリプシンもトリプシノーゲンを切断するため、連鎖的に活性化が進む。同じくキモトリプシンは不活性型のキモトリプシノーゲンとして分泌され、エンテロペプチダーゼおよびトリプシンによりN末端が切断され、活性型に変化する。カルボキシペプチダーゼの前駆体はプロカルボキシペプチダーゼであり、この酵素もエンテロペプチダーゼおよびトリプシンにより活性化される。膵液中のタンパク質分解酵素の活性化にはトリプシンが中心的な役割を果たしていることが分かる。

図1.膵液中に分泌されるタンパク質分解酵素の働き.

それぞれの酵素の特徴

これら3つのタンパク質分解酵素の至適pHは中性付近である。小腸前半の十二指腸では胃液が流れ込むこともありpH 6前後であるが、空腸、回腸と小腸後半に進むにつれpHは高くなり7.4程度に達し、分解効率が高まる。消化物が小腸を進む間に段々と分解が進み、最終的にはジ、トリペプチド、アミノ酸レベルにまで分解され体内へと吸収される2)。  トリプシンおよびキモトリプシンはエンド型の酵素であり、タンパク質配列の内部を切断するのに対して、カルボキシペプチダーゼはエキソ型酵素であり、末端からアミノ酸を切断していく(図2)。これら性質の異なる酵素が働くことで効率よく低分子化が進む。

図2.膵液中のタンパク質分解酵素の性質.

タンパク質の消化吸収に深く関与する消化酵素やトランスポーター自身もタンパク質である。当然その原料となるアミノ酸が供給されなければそれぞれの働きが弱くなり、負のスパイラルに陥ってしまう可能性もある。改めてタンパク質摂取の重要性について考えてみてもいいのではないだろうか。

<参考資料>

1)重点研究テーマ’魚の消化性のすばらしさ’.〈消化吸収の基礎〉胃液中の消化酵素.お魚たんぱく健康研究会HP.

2)重点研究テーマ’魚の消化性のすばらしさ’.〈〈消化吸収の基礎〉タンパク質の消化吸収.お魚たんぱく健康研究会HP.

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