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練り製品は消化性に優れる

2024.09.03

今回は消化性の高い魚タンパク質を原料として作られる水産練り製品の消化性について解説する。

刺身よりもかまぼこの方が消化されやすい

魚のタンパク質が乳タンパク質(ホエイ)や大豆タンパク質よりも人工胃液中で消化されやすいことは別のページで紹介した1)。ここでは、同じ魚のタンパク質でも刺身とかまぼこの消化性について調べた研究結果について述べる。生鮮魚介類(いわゆる刺身)とかまぼこの人工消化液に対する消化性を比較した結果、生鮮魚介類(マグロやサケ、マダイ刺身などの平均)よりも市販かまぼこ(全国各地の市販品の平均)の方が消化率が高かった(図12)。また、研究室で調製したかまぼこの平均値が最も高くなった。魚肉の状態から水産練り製品への加工段階でタンパク質の状態が変化し、より消化されやすい構造に変化したと考えられる。

図1.生鮮魚介類、市販かまぼこおよび自作かまぼこの消化性の違い.
参考資料2)塚正泰之.かまぼこの物性と消化性との関係に関する研究.水産練製品の機能性研究成果集.100.の図を改変.

練り製品の消化性

図2には人工胃液(ペプシン溶液)に浸漬して経時的に消化を進行させた時の各食材の形状変化を示した3)。タンパク質を含む食品として焼肉(牛)、サラダチキン、ゆでたまご(白身)を比較対照とした結果、板および揚げかまぼこの形状が速やかに小さくなっていくことが分かった。

図2.タンパク質食材の人工胃液中での経時変化.
各食材を同じサイズに切り出して人工胃液(ペプシン溶液)で消化し、外観を観察した.

図2に示した食材以外にも同様の実験を行い、人工胃液消化中の乾燥重量の経時変化から消化率(図3)および消化速度(図4)を算出した。

図3.タンパク質食材の消化率.
各食材を同じサイズに切り出して人工胃液(ペプシン溶液)で消化し、消化物の乾燥重量を基に消化率を算出した.値は平均+標準偏差(n = 3)で示した.
図4.タンパク質食材の消化速度.
各食材を同じサイズに切り出して人工胃液(ペプシン溶液)で消化し、図3の消化率を基に消化速度を算出し、消化性の指標とした.値は平均+標準偏差(n = 3)で示した.

これらの結果から、畜肉、鶏肉、卵由来の食材よりもカニカマ、はんぺん、ちくわを含む練り製品の消化速度が高いことが明らかとなった。やはり魚タンパク質由来であることと、練り製品への加工という条件がより消化性を高くすることに寄与していると推測される。一方で、はんぺんの消化性が特に高いようにも見えるが、これは同体積中のタンパク質濃度が低いためだと考えられる。今回は消化性のみに焦点を当てた実験であったが、食品の質を見極めるためには、タンパク質濃度(量)と消化性のバランスを考慮することが重要だと考えられる。


消化に優れる食品と腹持ちの良い食品の性質を見極めて、状況に合わせた美味しくて楽しい食事を心がけることが健康的な生活を送ることに大切ではないだろうか。

<参考資料>

1)お魚たんぱく健康研究会HP.重点研究テーマ’魚の消化性のすばらしさ’「魚タンパク質の消化性の高さ」.

https://www.fishprotein.net/priority_research/d0005


2)塚正泰之.かまぼこの物性と消化性との関係に関する研究.水産練製品の機能性研究成果集.100 (2010).


3)日本かまぼこ協会HP.「かまぼこって本当に消化がいいの?」動画.

https://www.nikkama.jp/fishprotein_movie

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