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食欲調節ホルモン グレリン、オベスタチン

2024.09.18

今回は食欲の調節に関与するホルモンであるグレリンおよびオベスタチンについて紹介します。

グレリンの発見

1999年に成長ホルモンの分泌を促進するペプチドが胃から発見されました1,2)。このペプチドは28個のアミノ酸から構成され、3番目のアミノ酸にオクタン酸という脂肪酸の一種がくっついた非常に珍しい構造をしています。しかも、この脂肪酸がくっついていないとまったく活性を示さないというから、不思議なものです。このペプチドは、成長という意味の「grow」の語源である「ghre」から、グレリン(ghrelin)と名付けられました。その後、このペプチドについて多くの研究が行われ、成長ホルモン分泌促進以外にも様々な生理活性を持つことが判明し、その中の一つとして食欲促進作用があることが分かってきたのです。

オベスタチンの発見

グレリンの発見からさらに6年後、今度はグレリンと逆の作用を持つペプチドが発見されました。それは、23個のアミノ酸から構成されるオベスタチン(obestatin)というペプチドです3)。ラテン語で「むさぼり食う」という意味を持つ「obedere」と、「抑制する」という意味を持つ「statin」から名付けられました。その名のとおり、グレリンとは逆に食欲を抑制する作用を持つペプチドなのです。

グレリンとオベスタチンの設計図は同じ

面白いことにこれら二つのペプチドは両方とも同じ設計図(遺伝子)から作られています(図1)。食欲を促進する作用と食欲を抑制する作用というまったく逆の性質を持つにも拘らず同じ遺伝子を基にして作られることは生物の不思議なメカニズムの一つと言えるでしょう。

図1.グレリンおよびオベスタチン合成の模式図.

今回紹介したペプチド以外にも食欲調節に関与するものがいくつか発見されていますので、今後また紹介していきたいと思います。人間の健康に大きく関わる食欲と摂食。これらのペプチドについての研究が進んで摂食のメカニズムが解明されれば、食欲のコントロールが可能となり過食症や拒食症などの摂食障害の治療につながっていくかもしれませんね。

<参考文献>

1)Kojima, M. et al., Ghrelin: structure and function. Physiological reviews, 85, 495-522 (2005).

https://doi.org/10.1152/physrev.00012.2004


2)海谷啓之. 新規脳腸管ペプチドホルモン・グレリン. 日本比較内分泌学会ニュース, 2006 (122), 2-16 (2006).

https://doi.org/10.5983/nl2001jsce.2006.122_2


3)Zhang, J. et al., Obestatin, a peptide encoded by the ghrelin gene, opposes ghrelin's effects on food intake. Science, 310 (5750), 996-999 (2005).

https://doi.org/10.1126/science.1117255

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