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DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)

2024.06.18

ここではタンパク質栄養価の指標として近年推奨されている消化性必須アミノ酸スコア(DIAAS)について紹介する。

アミノ酸スコアの変遷

代表的なタンパク質栄養価の指標であるアミノ酸スコアは基準値や算出方法の変更により同じ食品でもその値が変化してきていることは別ページで説明した。

例えば、1973年、1985年、2007年の基準でそれぞれの値を算出すると6ヵ月乳児の場合、大きく変化している(図11)。牛乳、エビ、あさり、大豆は1985年までの算出法では100を切っていたが、2007年の算出法だとすべてアミノ酸スコア100である。

図1.6ヵ月乳児のアミノ酸評点パターンを用いたアミノ酸スコアの変遷.
参考資料1)岡﨑 惠美子.アミノ酸スコアについて解説.お魚たんぱく健康研究会Webセミナー.の資料を改変.

同じ食品群の値を18歳以上の基準で示すと2007年のこめ以外はすべてアミノ酸スコア100である(図2)。現在ではこめや小麦などの穀類を除いて多くの食品のアミノ酸スコアは100を示し2)、タンパク質の質を比較する評価系としてはなかなか差別化が難しくなってきていることも事実である。そこで必須アミノ酸のバランスに加えて、タンパク質やアミノ酸がどれくらい消化されやすく、体内で利用されやすいかを総合的に判断する指標として1990年にPDCAAS(タンパク質消化率補正アミノ酸スコア)が提唱され、2013年からはDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)が推奨されている。

図2.18歳以上のアミノ酸評点パターンを用いたアミノ酸スコアの変遷.
参考資料1)岡﨑 惠美子.アミノ酸スコアについて解説.お魚たんぱく健康研究会Webセミナー.の資料を改変.

DIAAS

アミノ酸スコアやPDCAASでは上限値が設定されているのに対して、DIAASは上限値の設定がない。そのため、より食品ごとのタンパク質の差別化をしやすい指標だと言える。DIAASとはDigestible Indispensable Amino Acid Scoreの略で、消化性必須アミノ酸スコアの他、消化性不可欠アミノ酸スコアと訳されることもある。この値を用いるとアミノ酸スコアでは差が分かりにくかった食品群でも質の差を比較することが可能であり、植物性タンパク質よりも動物性タンパク質の方がDIAASの値が高くなる傾向が認められた(図3)。

図3.タンパク質素材のアミノ酸スコアおよびDIAAS.
アミノ酸スコアは七訂日本食品標準成分表のアミノ酸成分表編の値を、DIAASは「植木暢彦.健康機能性豊富な魚タンパク質をおいしく食べ続けるために.未病と食を考える シード・プランニング.83-92, 2024.」の図を改変.

DIAASの算出法

DIAASの算出法の概要を図4に示した。まず、食物タンパク質1 g中の消化性食物必須アミノ酸量をアミノ酸分析で定量し、その値に回腸消化率を乗じる。回腸消化率を用いるのは、小腸で吸収されないアミノ酸は大腸で微生物に利用され、糞中窒素の測定だけでは実際よりも消化性が高く出てしまうものもあることから、回腸消化率の方が正確な値と考えられるためである。ヒトの回腸消化率が最も適切な値ではあるが、侵襲を伴う測定であるためデータの蓄積が困難である。そのため、その代替として成長期のブタやラットの回腸消化率を用いることもできる3)。さらにそれらの値がない場合は、粗タンパク質消化率や真の糞便タンパク質消化率のデータを用いることが提案されている。将来的には標準化された回腸アミノ酸消化性試験法の開発や食品の回腸アミノ酸消化性値のデータベース構築が必要とされているが、それまでは公知のデータ4,5)を用いてDIAAS値を算出しても良いとされている。こうして得られた値をアミノ酸参照パターン3)の値で除して、各アミノ酸の中の最低値をDIAASとする。

図4.DIAAS算出の概要.

現状では水産物に関する回腸消化率のデータは少なく、図3に示した値も今後の基礎研究の発展とデータベースの充実により、さらに精度の高い値が示されることが期待される。

<参考資料>

1)岡﨑 惠美子.アミノ酸スコアについて解説.お魚たんぱく健康研究会Webセミナー 2023年8月22日.


2)日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)アミノ酸成分表編.

https://www.kyoiku-tosho.co.jp/data/correct/teisei_colorchart.pdf


3)FAO Expert Consultation. (2011). Dietary protein quality evaluation in human nutrition. FAO Food Nutr. Pap, 92, 1-66.

https://www.fao.org/ag/humannutrition/35978-02317b979a686a57aa4593304ffc17f06.pdf


4)World Health Organization, & United Nations University. (2007). Protein and amino acid requirements in human nutrition (Vol. 935). World Health Organization.

https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/43411/WHO_TRS_935_eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y


5)Gilani, S., Tomé, D., Moughan, P., & Burlingame, B. Report of a Sub-Committee of the 2011 FAO Consultation on “Protein Quality Evaluation in Human Nutrition.”.
https://www.fao.org/ag/humannutrition/36216-04a2f02ec02eafd4f457dd2c9851b4c45.pdf

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