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タンパク質栄養価指標の変遷

2024.02.20

タンパク質の栄養素としての質を評価する基準は、プロテインスコアやアミノ酸スコア、PDCAAS、DIAASなどこれまでにいくつかの指標が提唱されてきた。ここでは関連する用語および指標の変遷について紹介する。

必須アミノ酸

タンパク質の栄養価を考える際には必須アミノ酸の概念が重要である。ヒト成人の場合、体内で合成できない8種類のアミノ酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、リシン、トレオニン(スレオニン)、フェニルアラニン、メチオニンに、体内で合成は出来るもののそのスピードが非常に遅く十分な供給量を期待できないヒスチジンを加えた9種類が必須アミノ酸である。ヒト幼児の場合はさらに、体内での合成量が十分ではなく不足しやすいアルギニンが追加される。

タンパク質必要量

1957年のFAO(国連食糧農業機関:Food and Agriculture Organization of the United Nations)の報告ではタンパク質必要量は0.35 kg/kg/日とされ、牛乳タンパク質中のトリプトファン含量を基にして算定されている1)。1965年のFAO/WHO(世界保健機関:World Health Organization)の報告では窒素出納法に代わり要因加算法が採用され、0.59 kg/kg/日と設定された。その後も算出方法や基準タンパク質の変更により、1973年のFAO/WHO報告では0.44 kg/kg/日、1985年のFAO/WHO/UNU(国際連合大学:United Nations University)報告では0.60 kg/kg/日、2007年のFAO/WHO/UNU報告では0.66 kg/kg/日とタンパク質必要量は改訂されてきた。

アミノ酸必要量

アミノ酸の必要量も測定法の改良により過去数回値が変更されている。1973年のFAO/WHOおよび1985年のFAO/WHO/UNUの報告では窒素出納法により必要量が算定され、2007年のWHO/FAO/UNUの報告では13C-標識アミノ酸を用いたトレーサー法が採用され、アミノ酸酸化量を呼気への13CO2排泄量から測定することで必要量を算定している1,2)

アミノ酸評点パターン

タンパク質栄養価の指標を算出する際に基準とされる値で、アミノ酸平均必要量(mg/kg/日)をタンパク質平均必要量(g/kg/日)で割って算出する。上述したようにタンパク質およびアミノ酸必要量はその測定法や基準タンパク質の変更に伴い、値が変化してきたため、アミノ酸評点パターンもこれまでに数回の変更が実施されている。

タンパク質栄養価指標の変遷

図1にこれまでのタンパク質評価法の変遷をまとめた。FAOなどの国際機関では1950年代からタンパク質栄養価の科学的評価法の基準となるべき必須アミノ酸必要量パターンの設定に着手し、1957年にプロテインスコアが提案された。これは牛乳中のトリプトファン含量を基準として、それぞれの食品タンパク質を評価する方法である。1965年に提案されたケミカルスコアは必須アミノ酸総量に対する必須アミノ酸量を基にして卵やヒトの母乳のアミノ酸組成と比較し、評価するものであった。1973年には再び元の考え方に戻り、タンパク質必要量に対する必須アミノ酸の推定必要量から算出したアミノ酸スコアが採用された。その後、1985および2007年に算定法やアミノ酸評点パターンが改訂され、現在のアミノ酸スコアが算出されている。これらの変遷に伴う食品タンパク質のアミノ酸スコアの変化については別のページで紹介する。

図1.タンパク質栄養価指標の変遷.
2)の資料を改変.

近年は消化性も加味した評価法が提唱されている。必須アミノ酸のバランスがよくても体内で吸収されなければ意味がないという考え方に基づいており、タンパク質やアミノ酸がどれくらい消化されやすく、体内で利用されやすいかを総合的に判断する指標である。1990年にPDCAAS(タンパク質消化率補正アミノ酸スコア)が提唱され、2013年からはDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)が推奨されるようになった。アミノ酸スコアやPDCAASは上限値が設定され、食品タンパク質ごとの差別化が難しい場面もあったが、DIAASは上限値がないため、純粋にタンパク質栄養価を比較できる指標として期待されている。DIAASに関する詳しい説明も別ページで紹介する。

<参考資料>

1)岸恭一.タンパク質・アミノ酸必要量の過去、現在、未来.「タンパク質・アミノ酸栄養学の過去・現在・未来」講演3.

https://www.jsnfs-chubu.jp/wp-content/uploads/2024/02/56-3.pdf


2)岡﨑 惠美子.アミノ酸スコアについて解説.お魚たんぱく健康研究会Webセミナー 2023年8月22日.

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