消化性と健康機能性
2024.12.10
消化性が高いと何が良いのか?今回は消化性と健康機能性の関連について紹介する。
機能性ペプチド
抗酸化活性や血圧上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用など多くの健康機能性が知られているが、その作用を示す代表的な物質としてペプチドが挙げられる。一般的に、タンパク質分解酵素の働きによりタンパク質が加水分解されることでタンパク質が断片化されてペプチドが産生される(図1)。

これらペプチドの中に元のタンパク質の性質とは異なる機能を有する機能性ペプチドが含まれていることがある。どういう機能性を持つか、その活性は強いか、などは実際に分析してみないと分からないが、少なくとも消化前のタンパク質の状態では活性は認められず、消化されて初めて機能性が発現してくることが重要な点である。つまり、消化分解が進むほど機能性ペプチドが産生されることが推測される。
タンパク質の消化による血圧上昇抑制ペプチドの産生
図2に魚肉、すり身、乳タンパク質および大豆タンパク質を人工胃液(ペプシン溶液)で消化した時のアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害率の経時変化を示した。ACE阻害率は血圧上昇抑制作用の指標としてよく用いられる。

各サンプルの乾燥粉末をペプシン溶液(100 U/mL)で消化し、得られた消化産物のACE阻害率を測定.値は平均±標準誤差(n = 3)で示した.
消化前(0分)のタンパク質の状態では阻害活性は認められず、消化が進行するとともにACE阻害率の上昇が認められ、特に魚肉およびすり身でそのスピードが速いことが分かった。大豆や乳タンパク質よりも魚タンパク質の方が消化されやすいことはすでに知られており1)、魚肉およびすり身の消化により、血圧上昇抑制作用を持つ機能性ペプチドが効率よく産生されたと考えられる。
かまぼこの消化性と機能性ペプチド産生
消化性の異なるかまぼこを用いた実験2,3)のデータを改めて解析してみると、ペプシン消化性(分解産物のOD280)とACE阻害率の間に正の相関が認められた(図3)。すなわち、過度な加熱により共有結合を増加させたかまぼこでは消化性およびACE阻害率が低かった一方で、一般的な加熱条件で調製したかまぼこでは消化性および血圧上昇抑制作用ともに高かった。一例ではあるが、健康機能性の強さや発現するタイミングは消化性によって異なると考えられる。

参考資料2) Ueki, N., Wan, J., and Watabe, S. Journal of food science, 79 (12), C2427-C2433 (2014).のデータを基にグラフを作成.
今回紹介したデータはペプシン消化に限ったものであるが、食品からタンパク質を摂取した後のスムーズな消化と機能性ペプチドの産生という視点を持って食事のことを考えても面白いのではないだろうか。
<参考資料>
1)お魚たんぱく健康研究会HP.重点研究テーマ 魚の消化性のすばらしさ.魚タンパク質の消化性の高さ.
https://www.fishprotein.net/priority_research/d0005/
2)Ueki, N., Wan, J., and Watabe, S. The pepsin digestibility of thermal gel products made from white croaker (Pennahia argentata) muscle in associating with myosin polymerization levels. Journal of food science, 79 (12), C2427-C2433 (2014).
https://doi.org/10.1111/1750-3841.12704
3)お魚たんぱく健康研究会HP.重点研究テーマ 魚の消化性のすばらしさ.かまぼこの消化性コントロール.
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