お魚たんぱく健康だより 魚肉タンパク質の健康機能性研究の発展
2022.10.28
近年、魚の主要成分であるタンパク質の健康機能性が次々と明らかにされてきています。ここではいくつかの事例をご紹介いたします。
健康機能性
近年、魚肉タンパク質の健康機能性が次々と明らかにされてきています。魚食が健康に良いという概念は一般的で、主にIPA(イコサペンタエン酸 EPA:エイコサペンタエン酸とも呼ばれる)やDHA(ドコサヘキサエン酸)など高度不飽和脂肪酸の影響と考えられてきました。これは数多くの根拠があり、まぎれもない事実ですが、魚肉の主要成分である(図1)タンパク質の効果についても最近数多くの証拠が示されるようになってきまし
脱脂処理されたイワシのタンパク質をラットの飼料に混ぜて飼育した結果、血栓溶解作用を持つことが分かってきました。魚介類摂取による健康増進や、心血管および脳血管疾患の改善効果はIPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸による血液凝固抑制作用とタンパク質の線溶作用の組み合わせによりもたらされるものと考えられます。脂肪酸もタンパク質もどっちも良い。魚は丸ごと食べると一番体に良いと昔から言われていますが、このような原理が基になっていると考えると辻褄が合いますね。
スケトウダラタンパク質の摂取により,筋肉量増加,血糖値上昇抑制,体脂肪蓄積抑制作用が認められることも分かってきました。速筋である腓腹筋(ヒラメ筋の外側にある筋肉)が増加するということは、加齢に伴い筋肉が減少していくサルコペニアの防止に適しているのではないでしょうか。結果として、運動器に障害が出てくるロコモティブシンドロームや身体機能や認知機能が低下し、要介護と健康の間の状態となるフレイル予防にも繋がると考えられ、今後の高齢化社会において健康な人の比率を増やすためにも魚肉タンパク質の摂取は需要な役割を果たすと期待されています。
現象論として魚肉タンパク質が健康機能性を持つことは古くから予想されていましたが、一言でタンパク質と言ってもその種類は10万種以上にも及ぶため、IPAやDHAなどの単一物質とは違い、なかなか作用機序を解明した論文としてエビデンス化することが困難であるという背景がありました。しかし近年では、主要物質の作用だけでなく、様々な物質の複合的な働きにも注目が集まるようになり、基礎研究も増加しており、今後ますます魚肉タンパク質の健康機能性が証明されていくことが期待されます。
<参考資料>
M. Murata, Y. Sano, S. Bannai, K. Ishihara, R. Matsushima and M. Uchida. Fish protein stimulated the fibrinolysis in rats, Ann. Nutr. Metab., 48, 348–356 (2004)
https://doi.org/10.1159/000081971
T. Mizushige, F. Kawabata, K. Uozumi, T. Tsuji, T. Kishida and K Ebihara. Fast-twitch muscle hypertrophy partly induces lipid accumulation inhibition with Alaska pollack protein intake in rats, Biomed. Res., 31, 347–352 (2010)
https://doi.org/10.2220/biomedres.31.347
M. Morisasa, N. Goto-Inoue, T. Sato, K. Machida, M. Fujitani, T. Kishida, K. Uchida and T. Mori. Investigation of the lipid changes that occur in hypertrophic muscle due to fish protein-feeding using mass spectrometry imaging, J. Oleo Sci., 68, 141–148 (2019)
https://doi.org/10.5650/jos.ess18193
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