ホーム / 健康だより / 食事バランスガイド遵守と死亡リスクの関係 魚食の影響は?

お魚たんぱく健康だより 食事バランスガイド遵守と死亡リスクの関係 魚食の影響は?

2024.08.22

今回は食事バランスガイド遵守率と死亡リスクの関係について調べられたコホート研究を紹介します。

食事バランスガイド

食事バランスガイドとは、健康で豊かな食生活の実現を目的に策定された「食生活指針」を具体的に行動に結びつけるものとして、厚生労働省と農林水産厚生労働省が決定したもので、1日に、「何を」、「どれだけ」食べたらよいかの目安を食事の組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものです(図11)

図1.食事バランスガイド.

食事バランスガイド遵守率と死亡リスク

食事バランスガイドの遵守レベルを段階的に分けて死亡リスクに対する影響を調べた研究では、遵守レベルが高いほど有意に全死亡リスクが低減することがわかりました(図22,3)。死亡要因ごとに分類して解析すると、循環器および脳血管疾患死亡ではバランスガイド遵守率が高いほど有意にリスクが低減し、がんおよび心疾患死亡リスクも低下傾向が認められました。これらの結果から、バランスの良い食生活を送ることが死亡リスクの低減につながると考えられます。

図2.食事バランスガイド遵守と死亡リスク.
参考資料2) Kurotani, K. et al., Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study. bmj, 352 (2016).のデータを基にグラフを作成.

フレイルの有無に応じた食事バランスと死亡リスク

フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」のことを指し、健康な状態と要介護状態の中間の段階とも言えます。世界に先立ち超高齢社会に突入した日本ではフレイル対策は重要な課題であり、適切な対応により健康状態に戻るのか、そのまま要介護状態まで進んでしまうのかでは大きく結果が異なります。そういった意味でもフレイル状態を改善できる可能性のある生活習慣に関する研究が注目されています。

ここで紹介するコホート研究でも食事の質の指標として食事バランスガイドの遵守レベルが用いられています。フレイルの有無で比較した結果、いずれも食事バランスガイド遵守スコアが高いほど、全死亡リスクが低減することが分かりました4,5)。このことはフレイル状態でも食生活の改善により死亡リスクを低減できることを示唆しています。

8つの要素(主食、副菜、主菜、果物、乳製品、エネルギー摂取量、菓子・嗜好飲料、白身肉と赤身肉の比)の解析では、主食、副菜、主菜、白身肉と赤身肉の比で死亡リスクと負の関係が認められました。特に白身肉と赤身肉の比では統計学的に有意な結果が得られました。白身肉(white meat)とは魚や鶏肉など、赤身肉(red meat)は牛肉、豚肉、羊肉、馬肉などを指します。さらに、魚料理と肉料理の遵守と死亡リスクの間にも有意な負の相関性が認められました。

これらの研究結果に対する研究者のコメント「これまで、一般に、管理栄養士やその他の医療専門家は、高齢者に対してたんぱく質を摂取させるために肉の摂取を推奨してきました。本研究では白身肉と赤身肉の比の遵守スコアが死亡リスクと負の関係を示したことから、牛肉や豚肉などの赤身肉よりも魚や鶏肉などの白身肉を多く摂取することが寿命延長のために重要である可能性を示唆しています。従って、たんぱく質の量だけでなく質(どのような食品からたんぱく質を摂取するか)も考慮した栄養教育が重要である可能性を示唆しています。」5)が非常に印象的でした。

<参考資料>

1) 農林水産省HP.食事バランスガイド」について.

https://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html


2) Kurotani, K. et al., Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study. bmj, 352 (2016).

https://doi.org/10.1136/bmj.i1209


3) 国立研究開発法人 国立がん研究センター.がん対策研究所 予防関連プロジェクト 多目的コホート研究.「食事バランスガイド遵守と死亡との関連について」.

https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3788.html


4) Watanabe, D. et al., Dose-Response Relationships between Diet Quality and Mortality among Frail and Non-Frail Older Adults: A Population-Based Kyoto-Kameoka Prospective Cohort Study. The Journal of nutrition, health and aging, 27(12), 1228-1237 (2023).

https://doi.org/10.1007/s12603-023-2041-7


5) 早稲田大学 スポーツ科学研究センターHP.「フレイルの有無に応じた食事の質と死亡リスク間の量反応関係」.

https://www.waseda.jp/fsps/rcsports/news/2023/12/28/1515/

ご入会について

世の中にお魚たんぱくの素晴らしさの理解を広げ、健やかな社会を実現するための情報プラットフォームです。魚肉普及と水産加工の発展に積極的に関わる意志ある法人・団体と個人、様々な方の入会をお待ちしております。是非ともこの研究会にご参加ください。