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お魚たんぱく健康だより タンパク質摂取量が多いほど高齢者の死亡リスクが低下

2024.05.06

今回はタンパク質の摂取量と死亡リスクの関係について調べた論文を紹介します。同様の研究は世界各国で実施されていますが、それぞれ食生活の特徴も異なることから、日本人を対象と本研究の結果はより我々にとって身近なデータではないかと考えられます。

調査条件

本研究は慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センターが実施している「川崎市における高齢者の暮らし方と健康に関する学術調査 (The Kawasaki Aging and Wellbeing Project (KAWP) 」1)の結果をまとめたものです。川崎元気高齢者研究は日常生活に介護を必要としない85-89歳の川崎市民約1,000人を対象に、健康・生活・地域とのつながりを検証している取り組みです。

まず、摂取エネルギーに対するタンパク質摂取量の割合(%エネルギー)を基準として、値の低い方から順に4等分し、下記4つのグループに対象者を分類しました2,3

 ・Q1:14.7%未満

 ・Q2:14.7%以上、16.7%未満

 ・Q3:16.7%以上、19.1%未満

 ・Q4:19.1%以上

栄養成分の比率はタンパク質摂取量が高いほど、炭水化物の摂取量が少なく、脂質の摂取量が多い傾向が認められました(図1)。総摂取カロリーについてはグループごとの大きな差は認められんせんでした(Q1:1,957 kcal、Q2:2,041 kcal、Q3:2,080 kcal、Q4:2,076 kcal)。

図1.総摂取エネルギーに対する各成分の摂取割合.
総摂取エネルギーに対するそれぞれの成分の割合を示した.参考資料2)Kurata, H. et al. BMC geriatrics 23.1 (2023): 479. のデータを基にグラフを作成.

結果

最もタンパク質摂取量の多いQ4の死亡リスクは最もタンパク質摂取量の少ないQ1のリスクよりも56%低いことが分かりました。

この時の摂取成分の内訳を見ていくと、4つのグループ間で植物性タンパク質の摂取量に大きな差は認められない一方で、動物性タンパク質の摂取量が異なることが分かります(図2)。動物性タンパク質の摂取量の違いが総タンパク質摂取量の違いに反映されていると言えます。

図2.総摂取エネルギーに対する動物性および植物性タンパク質の摂取割合.
総摂取エネルギーに対するそれぞれのタンパク質の割合を示した.参考資料2)Kurata, H. et al. BMC geriatrics 23.1 (2023): 479. のデータを基にグラフを作成.

動物性タンパク質の内訳を確認すると、Q1とQ4の間で魚および肉類の摂取量の差が大きいことが分かります(図3)。

図3.各食品の摂取量.
1,000 kcalあたりの摂取量を示した.参考資料2)Kurata, H. et al. BMC geriatrics 23.1 (2023): 479. のデータを基にグラフを作成.

さらに、Q1の摂取量に対する相対値で比較すると、Q4では肉類を2.2倍、魚を3.4倍も多く摂取していることが分かり、死亡リスクの低下に寄与している可能性が高いと考えられます(図4)。

図4.Q1に対する各食品の摂取量相対値.
Q1の摂取量を1とした時の相対値で示した.参考資料2)Kurata, H. et al. BMC geriatrics 23.1 (2023): 479. のデータを基にグラフを作成.

現在、高齢者に対してタンパク質の積極的な摂取が推奨されていますが、本研究ではその意義を裏付ける一つの結果が得られたのではないでしょうか。研究会としては魚からタンパク質を摂取するメリットをこれまでにも解説してきましたが、今回紹介したデータもその後押しになるものと考えます。積極的にタンパク質を摂取する食生活を心がけ、一緒に健康寿命を延ばしてみませんか。

<参考資料>

1) 慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センター.川崎元気高齢者研究HP.



2) Kurata, H. et al. Dietary protein intake and all-cause mortality: results from The Kawasaki Aging and Wellbeing Project. BMC geriatrics 23.1 (2023): 479.

https://doi.org/10.1186/s12877-023-04173-w



3) 日経ビジネス電子版.日経Gooday.たんぱく質を多くとっている高齢者ほど長生き.

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00283/022000259

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