お魚たんぱく健康だより イワシ、サバ類の摂取量増加で世界の死亡者が減少する可能性
2024.04.15
今回は赤身肉の代わりにイワシやサバなどの小型浮魚類を摂取すると世界の死亡者が減少する可能性があるという国立研究開発法人国立環境研究所、産業技術総合研究所およびサンシャイン・コースト大学による国際共同研究チームが発表した論文の概要を紹介します1,2)。
背景
・牛、豚、羊などの赤身肉の摂取は非感染性疾患のリスク増大と関連することが報告されている
・非感染性疾患による死亡は2000年(約3,100万人)から2019年(約4,100万人)の間に30%以上増加
・2019年現在、世界の全ての死亡原因の約70%を非感染性疾患が占める
→その77%が低、中所得国で発生
・イワシ類、サバ類等の小型浮魚類は赤身肉に比べて生産時の温室効果ガスの排出負荷が大幅に低い
・小型浮魚類は人体に必要な栄養素を豊富に含み、非感染性疾患のリスクを軽減することが指摘されている
・人間が消費しているのは漁獲された小型浮魚類の約26%に過ぎず、残りの74%は魚粉や魚油の製造に使われている
→小型浮魚類に含まれる栄養素のほとんどが養殖中に失われるため非効率
・持続可能で健康的な食事を実現するために小型浮魚類の消費拡大を提唱する研究は増えている
→しかし、魚粉や魚油の製造に使用される小型浮魚類を人間が消費することで、世界の疾病負担がどの程度軽減されるかは明らかではない
研究の目的
小型浮魚類の潜在的供給量の限界を超えることなく赤身肉を代替した時の国別の疾病予防への影響を定量的に評価する
結果
・赤身肉を小型浮魚類に代替することで、2050年に世界の赤身肉消費量は基準シナリオと比較して最大で8%減少
・結果として、2050年には虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病と大腸がんによる世界の死亡者数が50万人、障害調整生存年数が75万人減少する
→特に虚血性心疾患に対する減少効果が高い
※障害調整生存年数(DALY:Disability-adjusted Life Year):1DALYは健康な状態で過ごす人生を1年失ったことを指す。ある疾患や健康状態におけるDALYは、その疾患や健康状態の有病者が早死にすることによって失われた年数と障害を有することによって失われた年数の合計。
・一人当たりの魚の摂取量が推奨摂取量の40 kcal/日を満たしていない国々への配分を優先するシナリオがより効果的
<参考資料>
1)Xia, S. et al. Unlocking the potential of forage fish to reduce the global burden of disease. BMJ Global Health 9.3 (2024): e013511.
https://doi.org/10.1136/bmjgh-2023-013511
2)国立研究開発法人国立環境研究所HP.イワシ・サバ類等の摂取量の増加で非感染性疾患による死者数減少の可能性.報道発表(2024年4月10日).
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