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お魚たんぱく健康だより 魚を食べてビタミンD不足を解消しよう

2023.07.18

ほとんどの人がビタミンD不足であるという研究結果が発表されました。比較的簡単に量を摂りやすい魚を食べてビタミンD不足を解消し、骨や体を強くして健康的な生活を送ってみませんか。

ビタミンD不足

最近行われた5,000人以上の大規模な調査により、東京都内で健康診断を受けた人の98%がビタミンD不足であることが分かってきました1,2)。全体ではビタミンD基準濃度(30 ng/mL)に達していない人がほとんどで、年齢別では若い年代ほどビタミンD濃度が低く、性別ごとでは男性よりも女性の方が平均値が低いことが明らかとなりました。その要因としては、屋外へ出にくくなった生活スタイルや過剰な日焼け防止、食生活の変化が影響していると考えられます。

ビタミンD不足による悪影響

ビタミンDが欠乏すると小児ではくる病、成人では骨軟化症や骨粗鬆症になりやすいことが知られています。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収促進、骨の形成や成長促進という重要な役割を担っているため、丈夫な骨を形成して強い体を作るために欠かせない栄養素であると言えます。最近の研究では、ビタミンD不足が将来的なサルコペニア発症を誘発する可能性も見出されてきました3,4)。健康的に長生きするためにも体内のビタミンD濃度を適切に保つことは重要ではないでしょうか。

図1.ビタミンD合成経路.

ビタミンD合成経路

ビタミンD合成経路のスタートには皮膚に紫外線が当たることと食事からの摂取がありますが、最終的には同じ活性型ビタミンDが体内で産生されます(図1)。ほとんどのビタミンDは日光を浴びることによって生成されると言われており、実際に日照時間の差によって体内のビタミンD濃度は異なります。単純に言うと夏は濃度が高く、冬は濃度が低い5,6)。そのため、しっかり外に出て紫外線によるビタミンD合成を促進することがビタミンD不足解消には最も効果的だと考えられますが、上述したようにそれが十分に出来ていない人が多いことも推測されます。

食事からの補足

十分に日光を浴びられない環境の人は食事から不足分を補うことが大切です。キノコ類に含まれるビタミンD2と魚類や鶏卵に含まれるビタミンD3が主な供給源として知られており、日本人の場合は、食品から摂取するビタミンDのうち90%以上は魚から摂取され、他はキノコ類4.4%、卵3.2%、肉類1.7%程度です7)。ウナギやサケ、サンマ、シラスなど比較的食べやすいものも多いので、室内に籠りがちな生活が続く時は意識して魚を食べ、ぜひ活力ある生活を送ってみてください。

<参考資料>

1)Miyamoto, H. et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. The Journal of Nutrition 153.4 (2023): 1253-1264.

https://doi.org/10.1016/j.tjnut.2023.01.036

 
2)時事メディカル 医学部・学会情報.「98%の日本人が「ビタミンD不足」に該当」.

https://medical.jiji.com/topics/3077

 
3)Mizuno, T. et al. Influence of vitamin D on sarcopenia pathophysiology: A longitudinal study in humans and basic research in knockout mice. Journal of cachexia, sarcopenia and muscle 13.6 (2022): 2961-2973.

https://doi.org/10.1002/jcsm.13102


4)国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究実績.「血中ビタミンD量の低下や筋内ビタミンDシグナル伝達の低下が筋力低下を導き、将来的なサルコペニア発症を誘発する可能性について」.

https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20221019.html


5)Kobayashi, T. et al. Variation of 25-Hydroxyvitamin D3 and 25-Hydroxy-vitamin D2 Levels in Human Plasma Obtained from 758 Japanese Healthy Subjects. Journal of nutritional science and vitaminology 29.3 (1983): 271-281.

https://doi.org/10.3177/jnsv.29.271


6)Tsugawa, N. et al. Comparison of vitamin D and 25-hydroxyvitamin D concentrations in human breast milk between 1989 and 2016–2017. Nutrients 13.2 (2021): 573.

https://doi.org/10.3390/nu13020573


7)Nakamura, K. et al. Fish as a major source of vitamin D in the Japanese diet. Nutrition 18.5 (2002): 415-416.

https://doi.org/10.1016/S0899-9007(02)00751-7

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