お魚たんぱく健康だより 海水魚と淡水魚で放射性セシウムの蓄積パターンは異なるのか?
2023.06.20
東日本大震災以降、環境や生物中に含まれる放射性セシウムのモニタリングが続けられており、これまでに蓄積されたデータから海水魚と淡水魚の違いも分かってきたようです。今回はFRECC+の研究紹介の記事を引用しながら、そのメカニズムについて紹介します。
放射性セシウムの蓄積状況
「水辺の生き物に取り込まれる放射性セシウム 淡水魚の放射性セシウムはなぜ高いのか」という記事1)の中で国立環境研究所の石井弓美子さんの話が紹介されています。「海水魚では放射性セシウム濃度が時間とともに低下し、現在ではほぼ全ての種で検出限界以下になっている一方、淡水魚では依然として高い水準で推移している」、とのこと。実際に放射性セシウムの基準値超過の状況2)をまとめてみると、水産物(海産)では2015年度以降はほとんど基準値を超過するものが認められていないのに対して、水産物(河川・湖沼)では、まだ完全に0%になり切れていない状況が続いています(表1)。いったい海水魚と淡水魚ではどのような違いがあるのでしょうか。

海水魚と淡水魚の違い
理由の一つには生理的な機能の違いが挙げられています。「海水魚は塩分濃度が高い海水中に住んでいるので積極的に塩類を排出しますが、淡水魚は体内よりも塩類濃度が低い淡水中に住んでいるので塩類を取り込んで保持します。そのため、淡水魚では海水魚よりも放射性セシウムの排出速度が遅くなるのです。」との説明のように、積極的に体外へ排出するか、取り込むかの違いが蓄積パターンの違いに影響していると考えられます。
もう一つの理由には環境も違いが挙げられています。「海では環境中に流れ込んだ放射性セシウムは希釈され、元の場所に長く留まることはありませんが、陸上では環境中に取り込まれた放射性セシウムがなかなかその場から離れていかない」と述べられ、主な要因と考えられます。海中では物質が拡散、希釈されるのに対して、河川付近では土壌や森林、生物といった狭い範囲内で放射性セシウムが循環してしまうため、濃度が薄くなるのに時間がかかっていると予想されます。
この他にも放射性セシウムに関する情報やふくしま復興のための取り組みなどの情報が載せられていますので、ぜひ元の記事1)を閲覧してみてください。
<参考資料>
1)FRECC+「Webマガジン ふくしまから 地球と環境の未来を考える」研究紹介. 水辺の生き物に取り込まれる放射性セシウム 淡水魚の放射性セシウムはなぜ高いのか.国立環境研究所 福島地域協働研究拠点.
2)ふくしま復興情報ポータルサイト.「農林水産物のモニタリング検査結果【概要】」.
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