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お魚たんぱく健康だより 魚をたくさん食べると認知症発症リスクが低下する

2023.04.18

これまでの大規模なコホート研究により「日本食」中心の生活は認知症発症リスクを低下させることが明らかにされていました。ここではその中でも特に魚摂取の認知症リスクに対する効果について紹介します。

日本食と認知症発症リスク

65歳以上の高齢者、約14,000人を対象に5年以上追跡調査をした研究で、食事パターンごとの認知症発症リスクが調べられました。「動物性食品」および「高乳製品」パターンでは、そのレベルの差異に関わらず認知症発症との有意な関係は認められませんでしたが、「日本食」パターンでは、最も低いレベルのグループの認知症発症リスクを1.0とすると、最も「日本食」レベルの高いグループでは同0.8と発症リスクが20%低下することが明らかにされました1,2)。これらの食事パターンは39の質問によりカテゴリー分けされており、「日本食」は魚、野菜、海藻、大豆製品、きのこ、果物などを多く摂取するという特徴を持ち、非常にバランスの良い食事であることが改めて証明されました。

魚の摂取量と認知症発症リスク

同じコホート研究の中で魚の摂取量に着目して解析した結果も紹介します。この論文では65歳以上の高齢者約13,000人を対象として解析が行われました。ここでの「魚」は生魚、煮魚、焼き魚、練り製品と定義され、その摂取量ごとにグループ分けされ、最も少ないグループの「魚」の摂取量は20.4 g/日で、最も多いグループは96.9 g/日でした。認知症の発症リスクは最も少ないグループを1.0とすると、最も多いグループでは0.85と、15%リスクが低下することが明らかとなりました2,3)。魚にはDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸やビタミンBやDなど健康機能性成分が含まれていますが、我々としては魚肉の主要成分であるタンパク質もこの認知症予防効果に貢献しているのではないかと考えてしまいます。今後さらなる研究の発展によりタンパク質摂取の認知症予防に関するメカニズムが解明されることを期待したいですね。

<参考資料>

1)Tomata, Y., Sugiyama, K., Kaiho, Y., Honkura, K., Watanabe, T., Zhang, S., Sugawara, Y. & Tsuji, I. (2016). Dietary patterns and incident dementia in elderly Japanese: The Ohsaki Cohort 2006 Study. Journals of Gerontology Series A: Biomedical Sciences and Medical Sciences, 71(10), 1322-1328.

https://doi.org/10.1093/gerona/glw117


2) 日本医療・健康情報研究所.保健指導リソースガイド ニュース.「魚をよく食べる人ほど認知症の発症が少ない 日本食に認知症の予防効果 日本人1万3000人を調査」.

https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2020/008954.php


3) Tsurumaki, N., Zhang, S., Tomata, Y., Abe, S., Sugawara, Y., Matsuyama, S., & Tsuji, I. (2019). Fish consumption and risk of incident dementia in elderly Japanese: the Ohsaki cohort 2006 study. British Journal of Nutrition, 122(10), 1182-1191.

https://doi.org/10.1017/S0007114519002265

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