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お魚たんぱく健康だより 赤身魚と白身魚

2024.10.01

今回は赤身魚と白身魚の分類とその特徴について紹介します。

赤身魚とは

赤身魚は、普通肉100 g中に色素タンパク質が10 mg以上含まれている魚、が分類されています。魚肉(筋肉)は普通肉(普通筋)と血合肉(血合筋)から成り、この普通肉中に含まれるヘモグロビンとミオグロビンの量に依存して赤身魚と白身魚が分けられます。ヘモグロビンやミオグロビンは赤色を呈する色素タンパク質であるため、その含有量が多いほど身の色が赤く見えます。10 mg以上という基準は、様々な濃度でヘモグロビン溶液を作った時に肉眼で赤く見え始めるのが10 mg/100 mlであったためと考えられます1)

ヘモグロビンとミオグロビン

ヘモグロビンとミオグロビンはいずれも酸素と結合しやすい性質を持っており、前者が血液中、後者が筋肉中に存在しています。ヘモグロビンが血管を通って運んできた酸素をミオグロビンが受け取り、必要とされるまで筋肉中に蓄えておくのです。これらの色素タンパク質が赤いのは、酸素と結合する部位であるヘム中に鉄イオンが結合しているためです。ヘムがグロビン(タンパク質)と結合していることからヘモグロビンと呼ばれており、ミオグロビンのミオは筋肉のという意味です。

余談ですが、ヘム中の鉄が酸化されると鮮赤色から褐色へと変化してしまいます。これが、刺身の鮮度が落ちると変色してしまい、商品価値が下落して理由です。

回遊魚に赤身魚が多い

代表的な赤身魚としてマグロやカツオがよく知られていますが、これらの魚種は長距離を遊泳する回遊魚です。アメリカから放流されたビンナガ(マグロ)が0.5-1.5年後に5000-9000 ㎞離れた海域で捕獲されたというデータも報告されています1,2)。192日間かけて9000 ㎞移動した魚だと1日に47㎞も遊泳しており、莫大なエネルギーが必要とされたことは想像に難くありません。このエネルギー産生に必要不可欠なものが酸素であるため、回遊魚ではミオグロビンを大量に含む血合筋が発達し、普通筋中にも多くのミオグロビンが存在しています。その結果として身が赤く見えるわけです。赤身魚でよく発達している血合筋は人間で言うと遅筋に相当し、いわゆるマラソンランナータイプの筋肉として知られています。

逆に、タイやヒラメなど普段はゆったりと動いていても、エサを捕獲する時や危険を回避する時にはパッと瞬発的に動く魚は、有酸素運動よりも無酸素運動を得意としています。これらの魚には酸素を蓄積しておくための色素タンパク質がほとんど含まれていないため、魚肉は白く見え、白身魚に分類されます。白身魚の中で占める割合が多い普通筋は人間だと速筋に相当する短距離ランナータイプの筋肉と言えます。

これらの筋肉の種類の違いは食感や味、栄養性の違いにも反映されますので、それぞれの特徴を知っておくとより美味しく魚を食べられるのではないでしょうか。

<参考文献>

1) 水産学シリーズ.白身の魚と赤身の魚-肉の特性.社団法人日本水産学会編.恒星社厚生閣(1976).

http://www.kouseisha.com/book/b474874.html


2) T. Otsu et al., Model of the migration of albacore in the North Pacific Ocean. U. S. Fish and Wildlife Ser., Fish Bull. 63, 33-44 (1963).

https://library.sprep.org/content/model-migration-albacore-north-pacific-ocean

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