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お魚たんぱく健康だより 伝統的食品「かまぼこ」は脂質代謝系に良い影響を与える

2024.11.12

日本の伝統食品である「かまぼこ」の摂取による健康有益性の増加に関する論文について紹介します。

背景および目的

健康長寿国と知られる日本であるが、その要因として普段食べている食事、いわゆる日本食の影響が大きいと考えられている。日本食の特徴は欧米食と比べて、低脂肪、低カロリーであり、魚介類や植物性食品の占める割合が多いことである。加えて、発酵食品や海藻、緑茶など健康有益性の高い食素材を多く含むことも知られている。しかし、いわゆる食生活の欧米化により日本食の内容も変化してきているため、先行研究では2005、1990、1975および1960年の日本食の献立を再現し、それらの健康有益性について調べられた1)。その結果、1975年頃の日本食が最も肥満抑制効果があることが明らかにされた。また、この時得られた内臓脂肪蓄積抑制効果は食事のPFCバランス(タンパク質、脂質、炭水化物のエネルギー比率)に依存せず、質的な違いが関与していることが示唆された。

そこで、今回紹介する研究では現代食の一部を改変して1975年の健康的な食事に近づける方法を探ることを目的として、ソーセージをかまぼこに置換した時の脂質代謝系に与える影響について調べられた2)。1975年食の特徴が肉類の摂取量が少ないことであったため、代替食として脂質含有量の少ないかまぼこが選択された(図1)。

図1.粉末かまぼこ、粉末ソーセージ、mimicかまぼこの栄養組成(100 gあたり).
参考資料2) 北野泰奈ら.日本の伝統的食品である「かまぼこ」が脂質代謝系に与える影響.日本食品科学工学会誌 62(4), 182-190 (2015).の表1の値を基にグラフを作成した.

方法

●飼料および実験動物

成分組成を図1に示した下記3種類のサンプルを粉末化して飼料に添加し、4週齢雄性SD系ラットを4週間飼育した。

・かまぼこ群:   健康有益性の高かった1975年の日本食の代表的食品として 378.5 kcal

・ソーセージ群:  高脂質傾向のある現代食の代表的食品として        624.7 kcal

・mimicかまぼこ群:かまぼこ群と同じPFCバランスを再現            378.5 kcal


●評価系

血漿および肝臓中の下記パラメーターを測定した。

【脂質パラメーター】

・TG(トリアシルグリセロール)

・TC(総コレステロール)

・PL(リン脂質)

・NEFA(遊離脂肪酸)

・FC(遊離コレステロール)


【脂質過酸化指標】

・PLOOH(リン脂質ヒドロペルオキシド)

・TBARS(チオバルビツール酸反応生成物)

結果および考察

図2.血漿脂質および過酸化脂質量.
参考資料2) 北野泰奈ら.日本の伝統的食品である「かまぼこ」が脂質代謝系に与える影響.日本食品科学工学会誌 62(4), 182-190 (2015).の表2の値を基にグラフを作成した.

●かまぼこ群とソーセージ群の比較

 ・かまぼこ群の血漿中TBARSはソーセージ群のものと比べて有意に低い値であった(図2)。

 ・かまぼこ群の肝臓中TGおよびTBARSはソーセージ群のものと比べて有意に低い値であった(図3)。

●かまぼこ群とmimicかまぼこ群の比較

 ・かまぼこ群の血漿中TG、TC、FC、PLOOHおよびTBARSはmimicかまぼこ群のものと比べて有意に低い値であった(図2)。
 ・かまぼこ群の肝臓中TBARSはmimicかまぼこ群のものと比べて有意に低い値であった(図3)。

図3.肝臓脂質および過酸化脂質量.
参考資料2) 北野泰奈ら.日本の伝統的食品である「かまぼこ」が脂質代謝系に与える影響.日本食品科学工学会誌 62(4), 182-190 (2015).の表2の値を基にグラフを作成した.

「かまぼこ」は「ソーセージ」よりも脂質の蓄積や脂質過酸化を抑制することが明らかにされた。「かまぼこ」と同じPFCバランスに合わせた「mimicかまぼこ」ではこれらの抑制効果が認められなかったことから、単純な一般栄養組成のエネルギーバランスのみに依存しないメカニズムで健康機能性が発現していると考えられる。以上のことから、現代食の代表である「ソーセージ」を伝統的な日本食である「かまぼこ」に置換することで健康有益性が増加することが示唆された。


※参考資料本文ではDNAマイクロアレイによる脂質代謝関連遺伝子の変動など、より詳細な解析と考察が行われています。ぜひ元の論文もご覧ください。

<参考資料>

1) 北野泰奈ら.時代とともに変化した日本食がマウスの肥満発症リスクに与える影響.日本栄養・食糧学会誌 67(2), 73-85 (2014).

https://doi.org/10.4327/jsnfs.67.73


2) 北野泰奈ら.日本の伝統的食品である「かまぼこ」が脂質代謝系に与える影響.日本食品科学工学会誌 62(4), 182-190 (2015).

https://doi.org/10.3136/nskkk.62.182

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