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お魚たんぱく健康だより アンセリンを含むサケエキスの摂取はスポーツ選手の疲労を低減する

2023.07.04

アンセリンやカルノシンなどのイミダゾールペプチドは抗酸化活性が高く、抗疲労効果や血糖値調節作用など様々な健康機能性を持つことが知られています。今回はサケ由来のアンセリンを含むエキス摂取のスポーツ選手に対する疲労低減効果に関する論文を紹介します。

背景および目的

アンセリンはマグロやカツオ、サケなどに多く含まれるβ-アラニンと1-メチルヒスチジンからなるジペプチドです。カルノシンやバレニンと同じイミダゾールペプチドで高い抗酸化活性を有し、抗疲労効果を示すことが広く知られています。この論文では、運動時に強い負荷がかかり、疲労感の抑制がパフォーマンス向上にもつながるスポーツ選手に対するアンセリンの効果があるかどうかを調べています。

方法

●アンセリン含有サケエキス(SEAns)の調製:

 ・シロサケの可食部をミンチ状に粉砕し、加水後90℃で加熱

 ・遠心分離上清を濾過した抽出液をソフトカプセルに配合し、被検食とした


●被験者および摂取条件:

 ・中、長距離種目を専門とする健常な男子大学生陸上部員9名

  (プラセボ群4名、SEAns群5名)

 ・SEAnsカプセルを1日9錠(SEAns0.4 g、アンセリン換算で0.12 g相当)、7日間摂取


●運動負荷

 ・1,500走タイムトライアル:15分ずつの休憩をはさみ3回トライアル


●評価系

 ・血液検査:白血球数、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、血糖値、遊離脂肪酸、総ケトン体を測定

 ・視力検査:静止視力、動体視力を測定

 ・疲労感調査:ねむけ感、不安定感、不快感、だるさ感、ぼやけ感の5項目をVAS法で評価

結果

・1,500 m走3回のタイムの推移では有意差は認められなかったもののSEAns摂取群でタイムが向上する傾向が認められた。

・運動後の白血球数はプラセボ群と比べてSEAns摂取群で有意に低かった。

・筋繊維の損傷により血液中に増加するCPKは運動後にプラセボ群で増加したのに対し、SEAns摂取群では運動前とほとんど変化が認められなかった。

・血糖値はプラセボ群では運動前後の変化が認められなかったのに対し、SEAns群では運動後に低下した。筋肉中への取り込みが促進されたと考えられる。

・競技力の高い選手ほど高いと言われている動体視力はSEAns摂取群で運動後で改善効果が認められ、動体視力/静止視力も16%向上した。運動誘発性の視力低下抑制に効果があると考えられる。 ・自覚的疲労感はSEAns摂取群で低く、特に運動後のだるさ感(腕がだるい、腰が痛い、手や指が痛い、足がだるい、肩がこる)およびぼやけ感(目がしょぼつく、目が疲れる、目が痛い、目が乾く、ものがぼやける)はプラセボ群よりSEAns摂取群で有意に低かった。

まとめ

アンセリン含有サケエキス(SEAns)摂取は、運動による筋肉損傷を抑制し、運動パフォーマンス向上および運動後の疲労感軽減に有効であることが示唆された。

<参考資料>

Naoko Terasawa, Hirokazu Muneda, Yoshinori Takahashi, Asana Koo, Yasuhiko Shiina. Effect of a salmon extract containing anserine on exercise performance and anti-lassitude of student athletes. Nippon Suisan Gakkaishi 80.4 (2014) 601-609. 

https://doi.org/10.2331/suisan.80.601

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