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お魚たんぱく健康だより 魚肉ペプチドの抗疲労効果

2023.04.04

これまでも魚肉タンパク質の加水分解物が様々な機能性を持つことを紹介してきましたが、ここでは、練り製品の原料として使われるすり身を酵素分解して調製した魚肉ペプチドの抗酸化活性および抗疲労効果について紹介します。健康的な生活を送る上で、疲労回復効果は今注目を集めている機能性です。

魚肉ペプチドとは

かまぼこや竹輪などの水産練り製品の原料として使われるすり身は、魚肉を大量の水で洗う「水晒し」という工程を経て作られる。もともとタンパク質比率の高い魚肉からさらに余分な脂質が除去されるため、結果としてすり身は非常に高タンパク質低脂質な素材となる。魚肉ペプチドはこのすり身を酵素で加水分解して作られたもので、タンパク質の純度が高いという栄養的特徴を保ちながら(図1)、タンパク質がペプチドへと分解されているため、抗酸化活性や血圧上昇抑制作用など様々な機能性が期待される食品素材である1)

図1.水分以外の栄養成分組成.
文献1)「魚肉すり身由来ペプチドの健康機能性と将来展望」冷凍 90 (1049), 145-150, 2015.の図を改変.

抗酸化活性と抗疲労効果(in vivo

魚肉ペプチドの摂取により、目覚めが良くなったり、疲れが取れやすくなったり、という体感を得る人は多数いたが、その真偽については不明であった。また、タンパク質加水分解物は多種多様なペプチドの混合物であるため、どのようなメカニズムで魚肉ペプチドが作用しているかも解明すべき課題とされていた。そのため、まずは抗酸化活性を指標とし、機能性ペプチドを同定する実験が行われ、高い抗酸化活性を持つIR(イソロイシルアルギニン)とRI(アルギニルイソロイシン)という二つのジペプチドが同定された2)。これらのジペプチドおよび魚肉ペプチドの疲労軽減効果を確認するため、デキサメタゾン投与により筋肉を委縮させて疲労状態を模したマウスの水泳時間を指標として疲労回復効果を比較した。デキサメタゾン投与により減少した水泳時間は魚肉ペプチド摂取により有意に回復し、IRおよびRIの単独摂取でも抗疲労効果が示された。

VAS法を用いた抗疲労効果の検証(臨床試験)

上述したようにin vivoで抗疲労効果が認められた魚肉ペプチドについてヒトでの摂取試験も実施された。VAS(Visual Analogue Scale)法を用いて疲労感を評価した。左端を「疲れを全く感じない最良の感覚」、右端を「何もできないほど疲れきった最悪の感覚」と設定し、疲労感を数値化した。その結果、12週間魚肉ペプチドを摂取すると、プラセボ摂取したグループと比べて有意にVASスコアが低下し、抗疲労効果があることが証明された(図2)3)

図2.魚肉ペプチドの抗疲労効果.
文献3)「Effects of Fish Meat—derived Peptides on Fatigue」 薬理と治療 48.8 (2020): 1393-1399.のデータを基に図を作成.

まとめ

抗酸化活性の高いジペプチドIRおよびIRを含む魚肉ペプチドは抗疲労効果を示す

<参考文献>

1) 植木暢彦.魚肉すり身由来ペプチドの健康機能性と将来展望.冷凍 90 (1049), 145-150, 2015.

2) Iwasaki Y. et al. Effects of Fish Meat-derived Peptide and Dipeptides on Dexamethasone-induced Fatigue in Mice. Journal of Food and Nutrition Research 7.12 (2019): 821-826.

https://doi.org/10.12691/jfnr-7-12-2

3) Sakai H. et al. Effects of Fish Meat—derived Peptides on Fatigue. 薬理と治療 48.8 (2020): 1393-1399.

http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/48080/1393

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