お魚たんぱく健康だより FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)によるすり身の解析
2025.07.24
今回はFT-IRを用いてかまぼこなど水産練り製品の原料であるすり身や加熱後のゲルについて解析した論文を紹介します。
FT-IR(フーリエ変換赤外分光法)
今回研究に用いられたFT-IRは対象の物質に赤外線を当てて吸収スペクトルを測定し、化学構造や成分を分析する手法です。脂質や水分、タンパク質などの成分を解析することも可能で、さらに細かく脂質の酸化やタンパク質の構造解析などにも応用でき、多種多様な用途が考えられます。また、非破壊で迅速測定できることも大きな強みと言えます。
すり身、加熱ゲルの解析
この研究では、すり身グレードの差の解析にFT-IRが活用されています。練り製品の原料として使われる冷凍すり身は、そのポテンシャルの差によってグレードが分けられており、メーカーごとに評価基準は色々ありますが、簡単に言うとより弾力を生み出しやすいすり身が高グレードとされています。今回実験で使われたすり身はグレードが高い順にSA、FA、AA、Aと分類され、それぞれのすり身およびすり身から調製された加熱ゲル(疑似かまぼこ)が解析されました(図1)。

他の手法とも合わせてすり身グレードの差や加熱ゲル形成時のタンパク質構造の変化(α-ヘリックスの減少、β-シート、β-ターン、ランダムコイルの増加)があることが明らかにされました1)。詳細は元の論文に譲りますが、非破壊検査で食品素材の性質や変化を迅速に調べられる可能性が示唆されました。分子レベルの解析により最適な調理条件の確立や求める食感の形成が出来るかもしれませんね。今後の応用が楽しみな技術です。
<参考文献>
1) Wei, Wei, et al. Analysis of protein structure changes and quality regulation of surimi during gelation based on infrared spectroscopy and microscopic imaging. Scientific reports 8.1 (2018): 5566.
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