お魚たんぱく健康だより フナ鰾由来ペプチドの血圧上昇抑制効果
2026.09.01
今回はフナ浮袋由来ペプチドの血圧上昇抑制作用について調べた文献について紹介します。
背景および目的
高血圧は心血管、脳血管疾患による死亡の主な要因であるが、広く使用されている合成ACE(アンジオテンシンI変換酵素)阻害薬(カプトプリルなど)は、腎不全や乾性咳、血管浮腫などの副作用を引き起こすリスクがあり、副作用の少ない物質の探索を行われている。一方で、中国で広く養殖されているフナ(Carassius auratus)の鰾(うきぶくろ)は通常はそのまま廃棄されるが、I型コラーゲンが豊富で、 魚鱗などに比べて夾雑タンパク質や糖が少ないことから、高純度なコラーゲンペプチドを効率よく抽出できるという利点を持った素材として知られている。そこで本研究では、フナ鰾の酵素加水分解物から安全かつ効果的な新規ACE阻害ペプチドを単離、同定することを目的として、その作用機序、生体内での血圧降下作用および長期的な安全性を調べた1)。
方法
●フナ鰾をペプシンとトリプシンを用いた人工消化液で加水分解
●サイズ排除クロマトグラフィーおよび逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を用いて単離精製し、2つの活性ペプチドHyp-GAR(Hyp-Gly-Ala-Arg)およびGA-Hyp-GAR(Gly-Ala-Hyp-Gly-Ala-Arg)をUHPLC-LTQ-Orbitrap MS/MS分析により同定
●ACE阻害活性測定(In vitro)
●自然発症高血圧ラット(SHR)にGA-Hyp-GAR経口投与し、収縮期血圧、血管収縮物質アンジオテンシンII(Ang II)、血管拡張を促すブラジキニン(BK)、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)および一酸化窒素(NO)を測定(In vivo)
結果
●GA-Hyp-GAR およびHyp-GAR のACE阻害活性(IC50)はそれぞれ4.00、12.2 µMであった。他の一般的なコラーゲン由来ペプチド(GPVやAGP)のIC50と比べるとGA-Hyp-GARは強力な阻害活性を示すと言える
●SHRにGA-Hyp-GARを経口投与した6時間後の収縮期血圧は投与前(193-194 mmHg)と比べて、高用量群(36 mg/kg)で60 mmHg(30.9%)、中用量群(24 mg/kg)で47 mmHg(24.2%)、低用量群(12 mg/kg)で40 mmHg(20.6%)低下した一方で、既存薬カプトプリル群(12 mg/kg)では56 mmHg(29.5%)低下した(図1)。また、血圧降下作用は投与後最大12時間にわたって有意に持続した。
●Ang IIはカプトプリル群(220.16 ± 31.67 pg/mL)と同等レベル(232.01 ± 28.91 pg/mL)まで有意に減少した。
●BKはカプトプリル群と同等の72.65 ± 5.10 pg/mLまで有意に増加(回復)した。
●eNOSおよびNO(一酸化窒素)は高血圧モデル群で50%以上減少していたレベルをそれぞれ正常対照群の86.05および90.58%にまで回復させた。

長期的な安全性試験でも問題は認められず、鰾という加工副産物から有用な成分が同定された好事例と言える。
<参考文献>
Han, R., Tian, J., Han, Y., Wang, G., Zhou, G., Dai, C., & Wang, C. (2025). Crucian Carp-Derived ACE-Inhibitory peptides with in vivo antihypertensive activity: Insights into bioactivity, mechanism, and safety. Molecules, 30(13), 2812.
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