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お魚たんぱく健康だより 魚加水分解物の摂取が睡眠の質を高める可能性がある

2025.06.26

今回は魚加水分解物の摂取による睡眠の質への影響について調べたランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー臨床試験の結果を紹介します。

背景および目的

現代社会では睡眠障害が広範囲におよんでおり、ドイツの成人を8,152人の約25%が質の悪い睡眠に苦しんでいることが示されていた。睡眠不足は、心血管疾患、認知機能障害、代謝機能不全などの生理学的・心理学的健康障害と強く関連しており、事故のリスク増加や生活の質低下、医療費の増加にも繋がるため、公衆衛生上の深刻な問題と見なされていた。そのため、これらの睡眠障害を改善し、睡眠の質を向上させる製品の開発が喫緊の課題となっていた。先行研究では、低分子量ペプチドからなる魚加水分解物の経口補給がマウスの急性軽度ストレスモデルにおいて抗不安様活性を誘導することが示されており、睡眠改善にも寄与する可能性があると考えられていた。そこで本研究では、4週間の魚加水分解物補給が睡眠の質に与える影響を明らかにすることを目的として、ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー臨床試験が実施された1)

方法

●研究参加者:年齢 35-60歳
       BMI 18.0から35.0
       睡眠の質 PSQI(Pittsburgh Sleep Quality Index)が6以上(睡眠の質が低い)
        などの条件を満たす45人(男性23人、女性22人)の健康な成人を対象とし、
        最終的には途中離脱者、プロトコル遵守違反者を除く35人(男性18人、女性17人)
        の結果を解析
●イワシ加工副産物から調製された加水分解物(98%が分子量3,000 Da以下)を1カプセルあたり349 mg充填
●プラセボは加水分解物と同量のシリカ
●1日2回(朝食時に2、夕食時に2カプセル)、合計4カプセルを4週間経口摂取
●加水分解物摂取群とプラセボ摂取群の間に4週間のウォッシュアウト(非摂取)期間あり
●主要睡眠評価項目: PSQI(主観的な睡眠の質、睡眠潜時、睡眠時間、睡眠効率、睡眠妨害、日中の機能障害)
●副次睡眠評価項目:
  Fitbit Charge 4ウェアラブルデバイス測定(睡眠時間、覚醒時間、睡眠期間、睡眠段階、睡眠スコア)
  オンライン睡眠日誌(睡眠の質(時間)、睡眠関連の回復、気分、健康、医療イベント、併用薬、製品摂取状況)
●その他心理測定評価項目:
  慢性ストレス、うつ病、不安、ストレス、特性不安、生活の質など

結果

●魚加水分解物摂取により、PSQIスコアで測定された主観的な睡眠の質が有意に改善した一方で、プラセボ摂取期間中にはPSQIスコアの有意な変化は認められなかった(図1)。
●魚加水分解物の摂取中、睡眠効率の有意な改善、睡眠妨害の減少、および日中の眠気の減少 が認められた。これらの改善はプラセボ期間中には観察されなかった。

図1.魚加水分解物摂取による睡眠の質への影響.
参考資料1) Eckert, F. et al. Clinical Nutrition ESPEN, 60, 48-58 (2024)のデータを基に図を作成.
ベースライン(0)に対して有意差あり(* < 0.01).

プラセボと魚加水分解物摂取との間に有意差は認めらなかったため、効果は限定的ではあるものの、魚加水分解物の摂取によりベースラインよりも有意に睡眠の質が改善されたことは有用な効果を期待させるものであった。この他の詳細な結果はぜひ元の論文をご参照ください。

〈参考資料〉
1) Eckert, F. et al. Efficacy of a fish hydrolysate supplement on sleep quality: A randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover clinical trial. Clinical Nutrition ESPEN, 60, 48-58 (2024).

https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2024.01.002

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