お魚たんぱく健康だより 旬のさかな「 鰤(ブリ) 」
2025.11.12

冬の日本の食卓には欠かせない魚「ブリ」。出世魚として成長に伴い名前が変わる面白さ、地域によって呼び名が異なる文化的背景、そして何より脂がのった身の美味しさ。今回は、旬・選び方・調理・文化と、総合的にブリの魅力をお伝えします。
ブリはスズキ目アジ科で、成長段階に応じて呼び名が変わる出世魚の代表格です。例えば関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ、関西ではモジャコ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリという具合に段階が変わります。日本沿岸から沖合まで幅広く回遊し、地域や季節によりその味わいやサイズに違いが出るのが特徴です。身体は紡錘形で、泳ぎ回る速さを活かした引き締まった身と、成熟するにつれて増す脂のコントラストが、食べる人の目と舌を楽しませてくれます。大きさとともに味わいも変化し、特に冬に産卵に備えて南下してくる「寒ブリ」は脂がしっかりと乗り、旨み・甘みともにトップクラスです。
地域差や個体差があるため一概には言えませんが、一般的には 11月〜2月頃 が旬の時期。特に日本海側や富山湾、氷見など北陸地域で水揚げされるものが知られています。この時期、冷たい海で脂を蓄えて身がふっくらとするため「寒ブリ」と呼ばれ、特に人気があります。逆に、夏には成長期で、身が締まっていて脂は控えめ。例えば刺身よりもあっさりした焼き物や煮物で楽しむのが向いています。養殖技術の発達により、年間を通じて入手しやすくなってきていますが、脂のり・美味しさ・文化的価値を考えると冬がやはり最もおすすめです。
ブリの魅力は「締まった身」と「適度な脂」の組み合わせにあります。成魚になるとほど良く脂が乗り、刺身や寿司だけでなく、照り焼き、あら汁、しゃぶしゃぶなど、さまざまな料理でその旨みを発揮します。部位によって味わいや調理に向いた方法が変わるので、用途に応じて使い分けると良いでしょう。
・背側の身:脂控えめで身が締まっているため、刺身や寿司向き。
・腹側の身:脂がよく乗り、焼き物・照り焼き・ブリしゃぶなどに最適。
・頭・あらの部位:出汁が出やすく、あら汁や鍋物・塩焼きに向く。
ブリは出世魚として、成長段階ごとに呼び名が変わるため、祝い事や節目の魚としても古くから重宝されており、成長=出世・飛躍の象徴として、縁起物としても扱われてきました。年末年始やお祝いの席では「大きなブリを家族で捌いて楽しむ」といった風景もあり、日本の魚食文化に深く根ざしています。特に年末年始の「年取り魚」として、西日本ではブリ、東日本では鮭(サケ)が用いられるという地域風習もあります。また、冬の寒い海を泳いで育った「寒ブリ」は、地域によっては高級品として取り扱われ、「氷見ブリ」「能登ブリ」「佐渡ブリ」などの産地名が冠されることも多く、漁業・流通・地域経済との関わりも深い魚です。
ブリには良質なタンパク質だけでなく、青魚ならではの DHA・EPA が豊富に含まれています。これらは脳・血液の働きに関わる栄養素として注目されています。また、ブリの脂は旨みと栄養の両立を実現しており、旬の時期のものは特に高い栄養価を誇ります。食べ方・調理法によっては栄養の吸収率も変わるため、たとえば刺身で生のまま楽しむ・ご飯と合わせるなどの工夫も有効です。
ブリは、スーパーや魚屋さんで手に入る機会も多く、家庭の魚としても親しみやすい存在です。旬を意識して、一つの魚を“季節の味”として捉えてみると、魚食がもっと楽しくなります。ぜひ、次のお買い物でブリを手に取り、いつもの食卓にひと皿加えてみてはいかがでしょうか。
鰤のおすすめレシピ
鰤大根

【材料】
- 鰤の切り身(あらでも可) 3~4切れ(約300g)
- 大根 1/2本
- しょうが(薄切り) 1かけ
- 水 300ml
- 酒 100ml
- 砂糖 大さじ2
- みりん 大さじ2
- 醤油 大さじ3
- すりおろし生姜 適量
- だし汁(お好みで) ※水の代わりに
【作り方】
- 沸騰した湯にブリを10秒ほどくぐらせ(霜降り)、すぐに冷水に取ります。
- 表面の汚れや血の塊を軽く洗い流し、水気を拭きます。(臭みを取って、煮汁が濁りにくくなります。)
- 大根の皮をむき、2〜3cm厚の半月切りまたは輪切りにします。
- 鍋に大根とたっぷりの水、米のとぎ汁(または少量の米)を入れ、中火で約15〜20分下茹でし、竹串がスッと通る程度に柔らかくなったら、水で洗っておきます。
- 鍋に 水(またはだし汁)・酒・砂糖・みりん・しょうが を入れ、中火で煮立たせます。
- 下処理をした ブリと大根 を入れ、再び煮立ったらアクを丁寧に取ります。
- 醤油 を加え、落とし蓋をして弱めの中火で 20〜25分ほど煮ます。煮汁が1/3程度になるまで煮詰めると、味がしっかり染みます。
- 火を止めてから 10分ほど置いて味を含ませます。時間があれば冷ました後、再加熱をするとさらに味が染みこみます。
- 盛り付けの際、煮汁を少し煮詰めて照りを出すと見た目もよいです。お好みで、青ねぎや柚子皮を添えても上品です。
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