返信先: 魚の生息域の変化について

#1754
fishpro
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 基本的には海水魚は水温の変化に応じてその生息域を変化させます。池や川などの閉鎖系に生息する魚は季節とともに大きく変化する水温に適応するため、運動に関わるタンパク質ミオシンの性質が変化する(温度馴化)ことが知られています(参考資料1)。それに対して海水魚は海水温に合わせて筋肉タンパク質を変化させることができないため、生息可能な環境を求めて移動していくと考えられています。よく「昔獲れていた魚が最近はめっきり獲れなくなった」という話を耳にすると思いますが、別の場所では「昔いなかった魚が最近獲れるようになった」という現象が起きているのではないでしょうか。
 単純に考えると日本周辺では、地球温暖化による海水温上昇に伴い、南にいた魚が北へ移動すると予想されますが、実際には南へ移動した魚がいることも環境DNAを用いた研究から明らかにされています(参考資料2)。これは新たな魚の出現により居場所を失った魚が移動したためではないかと考察されています。
 海水温以外にも藻場の減少や餌の状況、天敵の存在など複雑な要因が絡み合ってはいるため一概には言えませんが、以前と比べて多くの魚の生息域が変化してきたことは確かであり、今後も続くと予想されます。地域の名産とされていた魚がいなくなり、価格が高騰するという現象も多くみられるのではないでしょうか。魚に関わる仕事をしていく上では、より先読みが重要な時代になってきたと考えられます。

〈参考資料〉
  1)渡部終五. 魚類筋運動の温度馴化. 比較生理生化学 9.1 (1992): 12-21.
    
  2) NHK.あの魚が食べられなくなるかも 温暖化で日本の海が激変!?.