お魚たんぱく健康だより 魚骨由来ペプチドの抗酸化活性
2025.09.01
今回はサケの骨由来ペプチドの抗酸化活性について調べた文献について紹介します。
背景および目的
魚骨は食品産業界の加工副産物としてよく知られている。従来リン酸カルシウムの供給源としての用途が主であったが、より付加価値の高い化粧品やバイオメディカル分野で利用可能な素材としての可能性も期待されている。廃棄物の回収と再利用の循環経済モデルは世界的にも重要視されている。そこで本研究では、サケ(Salmo salar)魚骨から抽出したコラーゲンを加水分解して得られたペプチドの抗酸化活性について調べた1)。
方法
●魚骨処理:サケの魚骨を洗浄して粉砕して凍結乾燥し、使用まで4℃保管
●抽出:プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む炭酸水素アンモニウムおよびリン酸水素アンモニウム混合溶液、または炭酸水素アンモニウム単独の溶液を用いて60℃、20時間加熱処理。上清を固形残渣から分離し、14 kDaの分子量カットオフ(MWCO)膜を用いて4℃で48時間、蒸留水に対して透析処理を行った。得られた有機抽出物は0.5 M酢酸に溶解し、可溶性タンパク質画分および酸可溶性コラーゲン(ASC)として回収した。
●脱脂:液-液抽出法を用いてクロロホルムで脱脂した。脱脂された相を回収し、窒素ガス流下でクロロホルムの痕跡を除去した後、凍結乾燥して4℃保管。
●ペプチド分画:凍結乾燥粉末を超純水に再溶解し、10 kDaカットオフの遠心フィルター膜を用いて10 kDa未満ペプチドを精製。さらに、逆相固相抽出(C18カラム)によって精製。
●抗酸化活性評価:ABTSラジカル捕捉アッセイで評価した。あわせて培養細胞を用いて酸化ストレスからの保護効果も確認した。
結果
●10 kDa未満のペプチドが高い抗酸化活性を示し、細胞保護効果も確認された。
●バイオインフォマティクスを用いて抗酸化活性の高い10種のペプチドモチーフ(GAA, GFVG, GGE, GPP, IR, LK, KD, PHG, RHF, QGAR)が特定された。

天然素材由来の加水分解物が高い抗酸化活性を示したことは、これまでの用途以外に化粧品や医療分野でも活用できる可能性を示唆しており、新たな価値向上が期待されます。ぜひ元の論文もご参照ください。
<参考文献>
1) Spoliti, Claudia, et al. Antioxidant Properties of a Peptide-Enriched Fraction Derived from Salmon (Salmo salar) Bone Collagen. ACS Food Science & Technology 4.10 (2024): 2407-2421.
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